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I'll always be with you【アイナナ千】

第14章 楽屋




コンコン...

扉がノックされて、ドアの近くにいた百くんが開ける。
岡崎さんが申し訳なさそうに入ってくる。


「お話中すみません。千くん、そろそろ衣装から着替えてください!」
「あ...そうだった。行ってくるね」


千さんは衣装だったことを完全に忘れていたようだった。

「あ!ちょっと待って、ユキ!」

ひらひらと手を振り出て行こうとする千さんに、慌てたように引きとめた百くん。

「なに?」
「写真撮るよ!!ユキ、里那ちゃん並んで!」
『えっ「里那、ほら」

私は戻ってきた千さんに腰を引かれる。


写真、2ショット?
お兄ちゃんも入ればいいのにと思ったら、百くんの隣で完全に保護者の立ち位置になっていた。

「撮るよ〜!3、2、」


笑って。耳元で聞こえる千さんの声。


突然で、ぎこちなく笑顔をつくる。




「撮れたよ〜!」
「良い写真だね」
「ですよね!」
「モモありがとう。写真送っといて」
「うん、もちろん!ユキ、行ってらっしゃーい」

千さんは着替えに行くため、楽屋から出て行った。



「里那ちゃん、バンさん、今日は本当にありがとうございました」

百くんが改まって、90度に腰を曲げて真剣な声色で言う。

「コンサートを楽しませて貰っただけで、何もしてないよ」
『百くん頭上げて、こちらこそ素敵なステージをありがとうだから!』

百くんがゆっくり顔を上げる。

「いや、今日のユキ本当に嬉しそうで...歌ってる時とか踊ってる時とか、ユキのパワーが凄かった。いつもより気合いが入ってるのが、ステージで隣にいると分かるんだよね!」
『そうだったんだね』
「里那ちゃんは、千さんにとって、一番ステージを見て欲しい人だったと思うよ。だから本当にありがとう」


5年も見られなかった。
百くんの言う通りだったなら、随分と待たせてしまった。

そばには居たけど、ずっとファンだったけど、アイドルのユキに会いに行けなかった。


本当の兄ように優しく側に居てくれる千さんも、キラキラのオーラを纏ったアイドルのユキもどちらも大好きだ。

今日、自分が大好きだったもう一人の存在、ユキに久しぶりに会って、あの時1秒1秒目を奪われていたドキドキを思い出せたよ。
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