I'll always be with you【アイナナ千】
第13章 コンサート
コンサート当日まではあっという間だった。
丁度、全国ツアー中だったので、神奈川公演のチケットを直ぐに用意してもらえたそう。
心配かけるのが嫌で、コンサートに行きたい気持ちは心の奥底に鍵をかけて仕舞っていた。
あの時から5年もの月日が流れた。
何度もトライしたけど駄目だったから、今回も駄目なんじゃないか...と諦観している自分がいる。
逆に、時効はとっくに過ぎてて何事もなく楽しめるんじゃないか、と
楽観的な自分もいる。
2つの感情を抱えながら、お兄ちゃんの運転で神奈川に向かった。
お兄ちゃんは緊張しないようにだろうか、車内でコンサートの話は一切出さなかった。
アイナナの子達の話や、私たちの小さい頃の昔話など他愛もない話をした。
アリーナに着くと、コンサートのフラッグやポスターが沢山飾られており、Re:vale色に染まっていた。
ピンクとグリーンを身に纏った多くの女性が、会場入り口から列を作っていた。
その後ろにお兄ちゃんと並んだ。
「体調は?」
『元気すぎて怖いぐらい、ばっちし!」
「良かった。何かあったらすぐに言ってね」
『うん。実はコンサート楽しみすぎて、うちわまで作っちゃったんだよね』
自作したうちわをトートバックからお兄ちゃんに見せる。
「千?」
『ちゃんと裏面に百もあるよ!』
「ははっ、二人とも絶対喜ぶよ」
デジタルチケットをかざして中に入る。
席は東側二階席の最前列の席だった。
『良い席用意してもらっちゃったね』
「そうだね。この位置なら顔も見えるよ」
『あ、二人には私が来るって言ってないよね?』
「言ってないよ。千に誰と来るのか、女か?って詮索されたから、社長って誤魔化しといたよ」
『あはは、ごめんね。ありがと』
会場が沢山のファンで賑わっていく。
ここにいる皆Re:valeが好きなんだ。
5年前の会場とは広さも人数も全然違う。
Re:valeの音楽が多くの人に愛されることが、自分の願いにもなっていたから、実際に多くの人が集まっている光景を見るのは感慨深い。
『お兄ちゃんとRe:valeのコンサート来てるって、なんか変な気分だね』
「そうだな。でも里那と来れて良かったよ」
『私も!あ、はじまる!!!』
会場のアナウンスが入り、照明が徐々に暗くなっていく。