I'll always be with you【アイナナ千】
第11章 譲れない想い
『千さんの馬鹿。千さんの好きの中には、私への申し訳なさも入ってるでしょ?千さんは優しいから...私を嫌になった時、申し訳なくて振れないのも嫌だし、怖いの』
「里那...」
『離れるのも、近づくのも怖い。だから、何もなかったように口約束を守って、このままで居たかったよ!』
千さんは何も言わず黙り込む。
私の気持ちは伝えられたと思う。
千さんのことを好きで、どうしようもない、臆病で狡い気持ちをそのまま伝えたよ。
お願い、今回だけは千さんが引いて。
昔の言葉と約束に囚われたままでいて。
数秒の沈黙。
「無理」
千さんがいつもの調子で言う。
私の話の何を聞いてたの?
どうして、そうなるの!
「僕はこのままは無理だ。君が欲しい、それだけじゃ駄目?」
『そう言うなら、私も無理!!』
「まあ、いいよ。君が折れることになると思うけど」
『これだけは折れない。平行線だね?』
「そうね」
千さんも私も一歩も引かない。
このまま話しても、埒があかないや。、
『じゃあ、一時休戦で。冷めちゃうから食べて』
「食べさせてくれるなら」
『はやく食え』
千さんは笑って、お箸を持ち直した。
私の作った料理を完食して、美味しかったよ、と改めて伝えてくれる。
『お粗末さまでした』
食器を洗おうと立ち上がるといいよ、と制し、千さんが立ち上がりキッチンに向かった。
『ありがとね』
「これぐらいはしないとね」
『最近忙しいのに、沢山連絡くれたでしょ?』
「まあ、そうね」
オープンキッチン越しに千さんがこたえる。
『忙しかったら、無理しなくていいからね。連絡が減ったぐらいじゃ拗ねないからさ』
「無理はしてない」
『そう?でも、今日の話したら、連絡減らしにくくなっちゃうでしょ?私からの千さんへの思いも見方も、いい意味でも悪い意味でも変わらないからさ』
「僕が送りたい時に送るよ。僕が二人いたら良かったんだけど」
『だからそれは困るって』
私たちは、気持ちを伝えても変わらずにお互い笑い合えていた。