I'll always be with you【アイナナ千】
第1章 妹というポジション
「久しぶりに飲むだろう?」
『うん、前に千さんと飲んだ以来だからね』
「そう。ゆっくり飲むならワインがいいと思ってね」
千さんは自分のグラスにもワインを注ぎ、ワイングラスを構える。
ワイングラスを持つ姿が、様になっている。
「ほら」
短い言葉で促され、私も同じようにグラスを持ち上げた。
「乾杯」
『ありがとう、乾杯』
鈍いグラスが合わさる音を合図に、一口含むと芳醇な香りが鼻に抜けた。
美味しい。
お酒に詳しい訳ではないけど、千さんの用意してくれるお酒はいつも美味しい。
きっと、良いお酒を用意してくれてるんだと思う。
久しぶりのアルコールだから、直ぐに酔ってしまいそうだ。
ペースに気をつけないと...
「ふふっ、気にせずに飲めばいいよ」
千さんは私の考えを見透かしたように笑って言った。
なんか悔しくて少し睨むと、そんな私の攻撃は全く効かないようで微笑みながらワインを味わっていた。
『千さんが前に言ったでしょ?』
「なに?」
『私はお酒弱くてすぐに酔うから、介抱が大変だって』
「まあ、そうね」
『だから、酔わないように気をつける』
「ふーん、そう。僕なら別に構わないけど」
『いや、私が気になるんだって』
「君に慣れてない人は大変なだけ」
私が20歳になった時のことだ。
千さんはお祝いと言って、悪酔いしづらく美味しい良いお酒を色々と用意してくれた。
初めてお酒を飲むドキドキ
やっと千さんと一緒にお酒を飲めるようになった達成感
千さんが私のために準備してくれていた喜び
色んな嬉しい気持ちで胸いっぱいだった。
だからこそ、飲み過ぎてしまったのだろうか?
残念なことに食事をし始めてからのその日の記憶はほぼない。