I'll always be with you【アイナナ千】
第6章 哀しみとエトセトラ
『っう、、、』
千さんを拒絶した私はとにかく無心で家に帰った。
玄関の扉を閉めた途端、張り詰めていた気が緩んで、その場に泣き崩れた。
乙女心というのは複雑だ。
千さんの発言はまさしく嫉妬そのものだったと思う。
千さんは基本人に関心がない。
百くんと組んでからマシになったけど...それでも千さんが執着をみせた人はお兄ちゃんと百くんだけだった。
壮五くんの心内は私には全く分からない話だが、壮五くんと私がどうなろうと千さんには関係ない話だ。
ヴヴ...ヴヴ...
スマホが鳴る。
一呼吸おいて、電話にでた。
『百くんっ、どッ、どうしたの?』
「大丈夫?ユキが仲直りの仕方を教えてって急にラビチャ送ってきて、絶対里那ちゃんと何かあったと思って」
ははは、なんて優しい相方なんだ。
『...ッウ、、はあ、百くん、ごめんね。心配かけて』
「里那ちゃん泣いてる?オレの事は気にしないで、ゆっくり深呼吸して。もしも里那ちゃんが話した方が楽になるなら話聞くよ?」
『ありがとう...でも、百くん、千さんに話しちゃいそうだからなぁ』
「え、モモちゃん、そんなに口軽そう?!オレだって何でもかんでもユキに話しちゃうわけじゃないよ!里那ちゃんとの仲だって大切だし、信頼されてると思ってたんだけどな〜」
千さんのそばにいた私だが、それはつまり百くんとも長い付き合いになる。
百くんが義理堅くて信頼できる人だってちゃんと分かってる。
でも千さんに責められたら、最後は千さんのために話しちゃうのも何となく分かる。
まあ、その時はその時か。
私は車の中での出来事を百くんに話した。
「ユキ...」
『これは嫉妬だよね?ねえ、百くんは、私の気持ちを知っているし、考えていることも察してると思う』
「うん...里那ちゃんがユキのことを『それ以上は言わないで。私は千さんの妹でいるって重い覚悟を決めてるの。...でもその覚悟が一瞬揺らいじゃった。重いつもりだったのに、千さんの言葉ひとつで』
期待させるような事を言わないで。
これ以上の関係を望んだら、千さんの邪魔になる。
面倒だって言われて、捨てられる気がするの。
それなら辛くても、何があっても、ここから千さんをずっと見守ってると決めたんだから。