第2章 はじまりと襲撃(♡)
ここに来てからずっといつも着ている黒のパーカーのフードを頭に被って、どこか不安そうに両手で身体をギュッと抱きしめている弔くん。
そんな弔くんの様子に皆はひと言も言葉を発さずにその様子とじっと見守っている。
何だかこの空気に居ても立っても居られなくなり、そっと弔くんに近づき、
『…弔くん、大丈夫?』
そう声を掛けるとグィッと腕を引かれるとギュウッときつく抱きしめられ…
「…っ…俺は失敗した。
先生も捕まった…、…っ……
作戦も、何もかも失敗した…」
私達が撤退した後オールマイトとオールフォーワンの戦いは、オールマイトがヒーロー引退という大きな代償を引き換えに勝利し、オールフォーワンは敗北したのであった。
そしてオールフォーワンは特殊刑務所のタルタロスに収容された。
か細い声にきつく抱きしめている腕が僅かに震えている事に気付くとそっと、死柄木の背中に遠慮がちに腕を回すと少し力を入れて抱きしめ返し。
『大丈夫だよ、弔くん。
今回は失敗しちゃったかもしれないけど…
こうしてまだ私達は弔くんの側にいるよ?
…だから、そんなに落ち込まないで?』
ね?と顔のすぐ横にある弔くんの薄水色の髪を見つめながら言い。
すると私の肩に顔を埋め、更に背中に回された腕できつく、きつく抱きしめてくる弔くん。
「……っ……」
『…ん、大丈夫だよ弔くん…っ』
「…、…俺は…っ」
『…うん、うん…わかってるよ…弔くん、
大丈夫…っ、大丈夫だよ…』
弔くんの言葉に小さく何度も頷くようによしよし、と細くて広い背中を撫でるも、今までアジトにしていたBARもなくなり、その上頼りにしていた弔くんの先生まで失ってしまったこの現状に…。
これから私たちはどうなってしまうのかな…と一抹の不安が押し寄せると、弔くんの背中を撫でる手が震えてくる。
そんな私の様子に気付いた圧紘さんが側に来てくれると、ポンと安心さすように頭を撫でてくれる。
『…コンプレスさん…っ。』
私の言葉に無言で頷く圧紘さんも仮面でその素顔は見えないが、きっと難しい顔をしているに違いない。
それから少し落ち着きを取り戻した弔くんに解放されたのはずいぶんと時間が経った後だった。