第3章 2話:噂の先輩
『せんせーい。今日朝提するの忘れてたの今持ってきました』
「先生だけ言って職員室入って来んな、馬鹿野郎」
担任の男教師が名簿帳で私の頭を叩く
『いったー…』
「出すんの遅いんだよ、気付いたらすぐ持ってこい」
『帰る前に思い出しただけマシだと思いますけど』
私の言葉を無視し、手元にあったプリントを奪い取られた
『奪い取るとか有り得なすぎ…』
「何か言ったか?」
『何にも。それじゃ私はこれで』
「帰るついでに武田先生呼んできて来れ」
『放送で呼んだらどうですか』
「面倒臭いから頼んでんだよ」
『あー、はいはい。あの人どこに居るんですか』
「体育館にいると思うぞ」
『あの人運動部の顧問してるの…』
「バレー部のな。ほら、行った行った」
担任人使い荒すぎでしょ、帰ろうとしてたのに。
武田、バレー部の顧問だったんだ。文化部みたいな顔してるのに
体育館に向かうとバレー部員が集まり何かを話し込んでいた
少し待っていると武田は用が済んだのか立ち上がる
『武田先生』
入口で名前を呼ぶと、はい!と運動部並の元気の良さで返事が返ってきた
武田「どうかしましたか?」
『私の担任が武田先生の事呼んでましたよ』
武田「わざわざありがとうございます!」
『それじゃ、さよなら…』
武田「芹沢さん、ちょっと待ってください。」
『何ですか…』
帰ろうと足を動かそうとした時、さっきまでとは違う声のトーンで名前を呼ばれた。恐る恐る振り返ると真剣な顔をして私の事を見ている
武田「制服は着崩してはダメですよ!」
『何だ、そんな事か…帰るだけ何で明日から着崩しませんね
それより早く職員室行った方がいいと思いますよ、武田先生』
武田「そうでしたね!ありがとうございました
気を付けて帰ってくださいね」
転んでしまうんじゃないかと心配になるくらい急いで向かう武田の後ろ姿を見送る
用事も済んだからやっと帰れると思ったのもつかの間。
"芹沢じゃん"と私の名前を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた