第4章 3話:プレイボーイ
side.及川 徹
転びかけてた彼女を助けたのはいいが、引き寄せたのに驚いたのか少し俺の腕の中で固まっている
及川「だから言ったのに…平気?」
喋りかけても返事が聞こえてこない。
及川「おーい、大丈夫?」
少し大きめの声で喋りかけるが返事がまだ聞こえてこない。
え、本当にこの子大丈夫?
及川「聞いてる?」
『…ぁ』と吐息が混じった声と共に返事が返ってくる。
『心配してくれたのにごめんなさい。助けてくれてありがとう』
何何何!最初の声!俺変な所、触ってないよね!?大丈夫だよね!!?!
顔に出ないよう平気なフリをして離れる。離れると彼女と触れていた所が寂しい感じがした。扉を開くと体育館には皆しかいなかった。
岩泉「おっせーぞ!…って」
俺だけだと思っていたのに烏野のマネージャーの子も一緒にいるのに驚く岩ちゃん。他の部員もチラッとこちらを見て岩ちゃん同様に驚いていた。待っていた皆の方に行く
岩泉「アレ烏野のマネージャーじゃねぇかよ」
及川「携帯忘れちゃったみたいでね」
岩泉「つーか、前まであんなマネージャーいなかったよな?」
及川「俺も今日初めて見るし、1年生なんじゃない?」
携帯の着信が彼女の方から聞こえるが電話にでないで、こちらに向かってくる
『ありがとうございました。一緒に着いてきてくれて』
及川「戻ろうとしてたし、お礼言われる事じゃないから大丈夫!」
『そうですよね…それじゃ…』
何か言いかけた時にタイミング悪く、また彼女の携帯から着信音が鳴り響いた。
及川「出なくていいの?さっきも鳴ってたよね?」
『皆の所に戻りながらするので大丈夫です』
及川「また転びかけるもしれないし、今でちゃいなよ〜」
『…お言葉に甘えて』
少し離れ、後ろを向きながら電話しだした。
聞かないようにしているが会話の内容が聞こえてしまう。
内容的に彼氏なのだろう。
可愛いし、やっぱり彼氏持ちだよね〜。
『だから…ゴムを…』この一言だけ鮮明に聞こえてきたのだ。
隣に居た岩ちゃんがその一言を聞いて、飲み物を吹き出す。
他の部員達も聞こえていたのだろう、一瞬声を潜めて話していたのに
その一言だけが大きな声だったのだから。