第1章 純情恋物語編
「ごめん下さい。もし、ごめん下さいよ!」
にの江「……ちょいと、誰も居ないのかい?番頭さん??」
昼間
店先から声がして、あたしは番頭さんを呼んだ
でも、返答がない
にの江「変だねぇ、出掛けるなんて言ってなかったのに…」
「もし!ごめん下さいよ!!」
にの江「はぃはぃ、今行きますょ」
あたしはトタトタと小走りに奥から店の玄関へ急いだ
すると其処には、傘を片手に小包を小脇に抱えた若者が立っていた
にの江「あら、アンタは昨日の…」
翔吾「昨日は雨で難儀している所を助けて頂き、ありがとう御座いました」
丁寧にお礼を言って傘を手渡す翔吾さん
にの江「良いんですよ、困った時ゃあ、お互い様さ」
傘を受け取ったあたしに、翔吾さんが小脇に抱えた包みを開けながら言った
翔吾「詰まらないモンですが、昨日のお礼に菓子なんぞを持って参りましたので、お収め下さい」
にの江「何言ってるんだぃ!そんな気遣いは無用だょ!」
翔吾「いや、しかし、おっかさんが…」
─ガラガラ
お智「ごめん下さい」
翔吾さんが無理やりあたしに菓子折りを握らせようとしている所で、店の戸が開いた
にの江「おや、お智ちゃん!どうしたんだぃ?珍しい」
翔吾「?」
翔吾さんが、あたしの手に菓子折りを押し付けたまま振り向いてお智ちゃんを見た
翔吾「!!!!/////」
にの江「おっと!(汗)」
ボロリと翔吾さんの手から菓子折りが落ちて、あたしは慌ててソイツを掴んだ
お智「あ、お客さまでしたか?…ゴメンナサイ、お忙しい所を///」
翔吾「かっ………かかっ…………可憐だ////」
お智「……?」
(あっちゃぁ……惚れちまったね(苦笑))
お智ちゃんに見惚れてボケッとアホ面を晒す翔吾さんを横目で見て
あたしは密かに溜め息を付いた