第1章 純情恋物語編
にの江「なんだぃ?止めたって無駄だよ!」
雅吉「あっはっはっ!そんな野暮は言わねぇよ!」
雅吉はまたカラカラ笑うと、珍しく真面目な顔をした
雅吉「だがよ、にの江…無茶だけはしてくれるなょ?
お前に万が一の事があった日には、俺は生きて行けねぇんだからな」
真面目な顔して恥ずかしいコトを言う亭主に背を向けると
あたしはやっと絞り出した小さな声で言った
にの江「…心配しなくても、ちゃんと無事に帰って来てやるよ、馬鹿///」
潤之助「雅吉殿。
にの江殿は拙者の命に代えてでも無事に貴殿の元にお返し致します故、ご安心召されよ」
雅吉「そぅですかぃ、潤之助の旦那
…そんじゃあ、一つ宜しく頼みますょ」
にの江「…余所の男に自分の女房を宜しく頼んでんじゃないょ、この馬鹿///」
雅吉「はっはっはっ!良いじゃねぇかょ、にの江!」
潤之助「……では、そうと決まったら行きましょうか、にの江殿」
翔吾「あのぅ……ちょっと良いですか?」
いざ行かんと、潤之助さんが裏門に手を掛けかけた時
翔吾さんがあたしの顔を伺うように見て言った
翔吾「さっき縁の無い商人なんぞ入れないと仰いましたが
にの江さんは、このお屋敷に縁があるんで御座いますか?」
にの江「あるもある、大有りさ」
あたしは忌々しい気持ちで屋敷の方を睨み付けた
にの江「あたしはもう少しで、この屋敷に若様の側室として嫁がされそうになったんだからね」
翔吾「Σえぇええっ!?」
あたしは大袈裟に飛び上がって驚く翔吾さんの口を塞いだ
にの江「こら、大きな声を出すんじゃなぃよ!」
翔吾「ふぁっへ!ひにょへはん!!////」
にの江「…あたしの実家は、このお家に仕える武士だったんだょ」
あたしは、溜め息を付いてもがもが言ってる翔吾さんに言った
にの江「…ソレをどこぞで見掛けた若様が、自分の側室にと言い出したのさ」
潤之助「………」
潤之助さんは、難しい顔をして黙っている
雅吉は、何を思っているのやら、また腰のモノに手をかけて、あたしをじっと見詰めていた