第6章 盗賊始末騒動編
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大倉「ええ、それがですね…」
大倉さんはそう言ってから、キョロキョロと辺りの様子をうかがうと
声を潜めて言った
大倉「…にの江さんは、近頃世間を騒がせている押し込み強盗の話はご存知で御座いますか?」
にの江「押し込み強盗ってぇとアレかい?
美人女将が居る店ばかりが狙われて、女将が凌辱された挙げ句、金品が根こそぎ奪われた上に店の者が皆殺しにされるとか言う…」
大倉「そうです、その押し込み強盗でござる
やはり、ご存知でしたか」
そう言って大倉さんは眉間にイヤと言うほど皺を寄せると、またキョロキョロと辺りにを気にしながら、更に声を潜めた
大倉「それで、ですね……実は、その、ちょっと気掛かりな事がござってですな…
…美人女将と言えば、ほら、江戸一番と噂の美人若女将がいらっしゃいますでしょう?」
にの江「何まどろっこしい言い方ぁしてんだい
お智ちゃんってハッキリ言えば良いじゃないのさ(苦笑)」
大倉「Σしーっ!!にに、にの江さん声が大きいですよ!!
何処ぞに賊の手先が居るやも知れないのですから迂闊に名前なんか出しちゃ危ないですよ!!」
あたしがお智ちゃんの名前を出したら、大倉さんが急に慌て出して大声をあげた
にの江「何言ってんだぃ、こんな真っ昼間に強盗が彷徨いてるもんかね(苦笑)」
大倉「いいえ、用心に越した事は御座いません!!」
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