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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第6章 盗賊始末騒動編


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旅は道連れ、世は情け


この世は大平、花より団子





そんな此処は、華のお江戸の八百八町


義理と人情が大好きな、粋で鯔背なスットコドッコイが集う町








皆様、お久しゅう


毎度、ご無沙汰しております


にの江で御座います





さて


あたしの可愛い可愛い愛息子の侑李が神隠しって名の拐かしに遭ってから、幾月かが経ちましたが


人買いと子供屋の野郎が御用になった後


江戸の町には、忙しないながらも何時もの平和な日々が戻っておりました







平々凡々なままで立ち行かないのが世の常で、平和な日々ってのは長くは続かないモンで御座いまして


近頃では、美人女将が居る店ばかりが狙われる押し込み強盗なんかが流行ってましてねぇ




…まあ


うちには雅吉って言う名の売れた用心棒(笑)がおりますから、心配は要らないのですが




翔吾さんの薬種問屋には、お智ちゃんっていう江戸一番の別嬪な若女将がおりましたから


ただでさえ、二人目を身ごもった後、悪阻で弱っている愛妻を心配した翔吾さんが


お智ちゃんに店から一歩も外に出ないように言いつけて


自分も始終お智ちゃんに張り付いて、怪しい輩が近寄らない様にと目を光らせておりましてねぇ…




…まあ、そんな有り様だったんで、当然翔吾さんはマトモに商売なんざ出来やしないってんでねぇ


嫁が大事なのは良いけれど、アレじゃ使い物にならないなんて、薬種問屋の大女将がボヤいておりました






そんな折り


その事件は起きたので御座います






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