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蜩(ヒグラシ)の宿─にの江大江戸人情帳─

第3章 養子騒動編


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お智ちゃんの実家の大名家の下屋敷で、父親が馬屋番をしていると言う、大倉さんの道場の門弟に連れられて

お智ちゃんが捕らわれている下屋敷に到着すると

馬屋番の息子が上手いこと人払いをしてくれた為、馬屋の辺りに人気は無かった



それからその人が、自分は此処で見張りをしていますと言ったので

馬屋であたしらを待っていた大倉さんと合流したあたしたちは、そのままお屋敷の中に忍び込むことになった



大倉「門弟が言うには、お智さんはどうやら奥座敷に閉じ込められているようです」

にの江「奥座敷ねぇ…そこに辿り着くまで、家の者に気付かれなきゃ良いけど…」

大倉「その心配は無用です

あやつが差し入れだと言って持って行った酒で、今は、見張り以外は酒盛りに興じているはずですから」

雅吉「問題は、奥座敷の前に陣取ってる見張りだけ

って訳だな?」



雅吉が大倉さんの話を聞いて、したり顔で頷く

すると、大倉さんが急に顔を曇らせた



大倉「はい、……しかし、それが一番厄介かも知れませんなぁ

屋敷の侍たちも、お智さんをおいそれと逃がす訳には参らないのですから

きっと、万が一に備えて、特に腕の立つ者を見張りに立てているに違いありませんから…」



小難しい顔をして腕組みしている大倉さん

その隣で

雅吉が、ニヤリと不適な笑みを浮かべた



雅吉「なぁに、心配要らないさ

なんせ、こっちには、道場主が居られるんだからょッ!!」


─ばしっ


大倉「Σごほっ!!(汗)」

にの江「もぅ、ちょぃと静かにおしよ!」



あたしは場所を弁えず大きな声を出す二人を睨み付けた



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