第1章 出会い
五条に挨拶が済んだ後、おれはじいさんに折檻部屋に連れてこられた。一通り折檻が終わり、意識が朦朧とする。
「起きろ」
朦朧とすれば、水をかけられ無理やり起こされる。その繰り返しだ。ろくに回らない頭で、じいさんの方を見る。
「いいか、よく聞け」
じいさんはおれの髪を掴むと、無理やり顔を上げさせた。
「お前が悟様を守るんだ」
「お、れが…」
「そうだ。悟様は最強だ」
それは知っている。馬鹿なおれでも覚えられるようにと、じいさんが根気強く何度も教えたからだ。
「だが、そんな最強の男でも、まだ子供だ」
それも知っている。五条はおれより二つほど下だと聞いた。
「この家では、ひどく大事にされている一方で、よく思わないやつも零じゃない。それがどういうことか分かるか」
ゆるやかに頷く。
「お前は外からだけじゃない。内からも悟様を護るんだ」
「うちから…」
「そのためのお前だ。だからお前を買った。お前の術式は、呪霊だけじゃなく、人を殺すにも向いている」
また頷く。
「護らなければ、お前に価値はない」
わかってる。知ってる。人の価値なんて、大したことないのだとおれはよく知っている。
このじいさんが、本当に五条を慕っていることも、護ろうとしていることもよく分かる。
そして、この五条家の中で唯一おれを人間扱いしてくれていることも、本当にわかっている。だから頷く。そうじゃないと、生きていくのは難しいから。