第3章 距離2
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護衛として数か月が過ぎると、おれたちは何となく互いの距離を掴み、それなりに(多分)やっている。
五条はすぐに煽ってくるし、相変わらずムカつくが、おれは年上なので我慢している。わがまま放題、煽りスキルマックスの五条だが、一線引いてみればなんて事はない。…まぁ、この間喧嘩して折檻されたのだけど。
折檻なんてものは大したことない。呪力でぶん殴られるのは痛いが、それ以外は正直おれに仕事を斡旋していた男に比べれば何のその。ヤクザの縄張りでやらかし薬をぶち込まれ回されたことに比べれば、大抵のことは大したことないのだ。
しかし、最近のおれの反応が気に食わなかったようで、五条は突然意味が分からん無茶ぶりをしてきた。
「お前護衛だろ?そこで見張っとけよ」
何を言い出すかと思えばこれである。
五条の隣には女の子。腕を組んでる様子を見るに彼女か?っていうかこの家に連れ込んでいいんだろうか。後でおれが折檻されたりしない?
様々な疑問が頭をよぎるが、「ハイ分かりました」というのは癪だ。
「は?嫌ですけど」
何が好きで人のセックスを見なきゃなんねーんだ。
嫌なことが顔に出ていたのだろう。五条はに、と悪だくみが成功したガキみたいな笑みを浮かべると、いつもの煽り口調で言葉を並べる。
「知らねーの?人間セックスの最中が一番無防備なんだぜ」
「あっそ。それで死んだら笑ってやるよ」
「あ?舐めてんのか」
「舐めてんのお前だろ」
「てめー、口の利き方に気をつけろ」
ヤクザかよ。ソープで働いてた時いたなぁ、こんなやつ。キャストが本当可哀そうだった。
「はいはい、すいませんでしたね。悟坊ちゃん」
「殺す」