第2章 距離1
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目が覚めると、林の中だった。
「んぅ…、なに、」
目覚めはいい方だ。起きてすぐに動けるようにと叩き込まれたからだった。
辺りはまだ暗い。頭がぐらぐら揺れる。気持ち悪い。だが痛みはない。けがはしてないようだった。
「やっと起きたか」
声の主は五条だった。放っていく何て言ってたくせに、五条は変なところ律儀だ。
「…ごめんなさい」
「いいよ。意味のねぇ謝罪ほど無駄なもんないから」
本当に毛ほども興味がなさそうに言われる。五条がいいというならいいか。それよりも、状況がまったくもってつかめない。頭の中は分からないことだらけだった。
「お前、マイナスなこと考えてただろ」
「どうだろ。あんま覚えてない」
「その考えに呪いが反応した。要するにお前は呪いに充てられて気を失ってたってわけ」
「そんなん、初めてだ」
「あっそ。どうでもいいわ」
五条はおろしていた腰を上げると、体を解して携帯をいじる。
「迎えがきた。お前、どうすんの?」
「どうするって…、なにが?」
「帰んの?多分、問答無用で折檻だけど」
「まぁ、他に帰る場所ないし」
「うぇ、まじでうちに住んでんだ」
「は?しらねぇの?」
「俺がお前のこと知ってると思ってんの?自意識過剰もほどほどにしろ。気持ち悪ぃんだよ」
「…おれ、あんたのその口の悪さどうかと思う」
いわゆるヤクザと呼ばれる人や、あきらかにやばいやつを見てきたおれが言うのだから相当だ。こいつ本当にやばいかもしれない。