第2章 距離1
「うわっ、なぁ見てこれ。鳥肌すげぇんだけど」
「お前まじで黙れ」
言いながら五条は片手で呪霊をいなす。どういう原理かなんてさっぱりだが、手を動かせば呪霊は空中に舞い、次の一振りで地面に叩きつけられた。
最強だ、というのは飽きるほど聞いてきたが、目の当たりにすると生き物としての格の違いをむざむざ思い知らされる。
「術式順転 蒼」
五条がつぶやくと同時、掌に蒼い光が収束する。まるで五条の瞳のような光を放つそれは、膨大なエネルギーを有していることは一目みれば分かる。
五条の手から離れ、それはあたり一帯をめちゃくちゃにした。
「やば……」
おれはというと、あまりの強さに腰を抜かししゃがみこんだ。
五条が護衛を必要としない理由が分かる。
弱いやつがきらいだと言う理由が分かる。
別におれ、いらないじゃん。
何となくわかっていたが、分からさせられるとくるものがある。唾を飲み込んで、ただ茫然とその光景を見ていた。
よく考えれば分かることだ。おれよりすごい人も、強い人もたくさんいる。頭がいい人、なんでも知ってる人、そんな人はいっぱいいるのだ。
それでも今まで護衛というものを恐らくつけていなかった五条は、本当にその必要がないからだ。
そんな簡単なことも分からなかった。
本当にばかだなぁ、おれ。
ぶつん。
突然、視界が切れた。