第2章 憧れの人
「ゆづるくんーー!」
ドアのところで鉢合わせしたのは全日本グランプリや世界ジュニア選手権で優勝した経験もある18歳。
羽生結弦くんだ。
3年前の北海道合宿で初めて会ったけど、すごく優しくて努力家で、いろんなこと教えてもらった。
でも最近は強化練習のためにカナダに言ってたらしいから、会うのは久しぶりだ。
「けっこう久しぶりだよね。」
「ゆづるくんぜんぜん帰ってきてくれないんだもんー」
「アハハハごめごめ!さとみちゃんちゃんと練習してた?」
「してたよ!全日本ジュニア昨日あったんだけど…」
私が言い終わらないうちにゆづるくんがさえぎった。
「どどどうだった?」
「ショート1位!」
私はピースを顔の前でパタパタさせた。
「ホント!?すごいじゃん!頑張ったね」
ゆづるくんはわたしの頭をポンポンした。
「うん、でもね…」
フリップが飛べたくなったことが心に引っかかった。
「えっ?どしたの?」
ゆづるくんがわたしの顔を覗き込む。
私はさっきの練習のことをゆづるくんに話した。