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*名探偵コナン*短編集*

第1章 *File.1*諸伏 景光*


「そんな顔してたぞ。珍しいな」
「……」
「えっ?マジかよっ?!諸伏の恋バナって、超久々じゃね?」
「うんうん。恋愛に関しては意外と秘密主義だからねー、降谷チャンと同じで。悪いことを言わないから、俺達に全部話してみ?」
「大きなお世話だ。お前らがオープン過ぎるだけだろ」
「…それだけは止めておく」

ゼロが憮然として言い返したが、オレも全くの同感だよ。
それから、松田。
JKじゃないんだから、いい歳したオジサンが恋バナは止めないか?
今時のJKが、恋バナって言葉を使ってるかどうかも怪しいよ。

「それだけは、って何だよ!いいから、話せって!」
「全部話したらラクになるよ?ね?諸伏チャン」
「ハア」

ある意味、これは脅迫且つ拷問だろ?
心配そうな表情の班長と正反対の、興味津々でニヤニヤといやらしい顔で萩原と松田がノリノリで迫ってくるから、断固拒否する。
オレのことはいいから、さっさと食事を選んでくれ。
ゼロはへえ?と、無言のままだが、やっぱり興味津々の顔。
コイツらに話したら、一体どうなるか?!
信じる信じない以前に、このネタで一生からかわれるのが目に見えてるだろ!

『いってらっしゃ~い』

隣から不意に聞こえた複数の声に立ち上がると、廊下に続く襖を少し開けて覗き見た。
出てくるのは、誰だ?
雪乃と呼ばれた女性か?
それとも他の三人の誰か、か?

「ヒロ?」
「諸伏?」
「どうした?」
「なにナニ?」
「シッ」

何事だ?と、ざわめく四人を見ずにゼスチャーで黙らせた。
気配を消して、同時に息を潜める。
間もなく隣の襖が開き、小柄な女性が一人、廊下に出て来た。

「……!!」

あの横顔、間違いない!!
雪乃だ!!

「声は出さないで」
「!」

そう確信するや否や、素早く襖を開くと雪乃の背後から腹部に左腕を回して耳元で囁く。右手はやんわりと彼女の口許を覆って。
懸念しているのは一つ。
再会出来たはいいが、雪乃にあの時の記憶があるか、否か。

「……」

が、瞬時に反応があった。
グルンと音が聞こえそうなほど勢い良く、雪乃がオレの方を振り返ったんだ。
心配は、何もなかった?


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