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*名探偵コナン*短編集*

第2章 *File.2*降谷 零*(R18)


カチャ

「!」

珍しく、仕事から早くに帰宅した夜。
その日付が変わる頃、ベッドに横になってまもなくだった。
扉が開いたのは。
玄関ではなく、風呂場の扉。
それも内側からだ。
何故?
風呂場にあるのは格子付きの縦長の細い窓だけで、大人どころか子供さえ通れるはずがない。
それにだ。
ついさっき俺自身が風呂に入った時は、当たり前だが何事もなかったし、誰もいなかった。
今現在、勿論この家には俺一人しかいないから、風呂場からは死角になる壁際へ移動し、息を潜めて神経を張り詰める。
いざと言う時には、枕の下に忍ばせてある拳銃を手に取れるように。
が、突然の侵入者は、こちらに意識を向ける余裕どころか、警戒心の欠片さえ全くない。
一体、誰だ?
何が目的なんだ?
そもそもが、風呂場の向こう側の何処から侵入した?
それこそ不可能犯罪ならぬ、不可能侵入だろ?

「…此処、は……何処?」

暫くして聞こえて来たのは、困惑と戸惑いに満ちた女性の小さな震える声。

「!?」

ちょっと、待て。
この声の主は?

カチャ、カチャ

そして彼女は、風呂場のドアをこちら側から閉めて中に入り、また開いた。

「…なん、で?」

不安気な細い声が、涙声に変わる。

「!!」

間違いない。
聞き間違えるはずがないだろ!

「きゃっ!」
「雪乃」

暗闇の中の突然の物音で、恐怖に駆られビクリと大きく震えた華奢な身体を引き寄せ、そのままかき抱くと、名を呼ぶ。
この世界に戻って来てから、心の中で、その名を何度呼んだ?
小柄な彼女の身体がすっぽりと、腕の中に収まった。
どれだけもう一度逢いたいと、この腕に抱き締めたいと恋焦がれた?

「…零、くん?」

覚えていてくれたのか。
もう、一年も前のことなのに。
あの日から、俺はお前のこと考えなかった日は一日もないよ。


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