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*名探偵コナン*短編集*

第1章 *File.1*諸伏 景光*


「…雪乃?」

オレの記憶通りの住所でいいと言うから、とりあえず、駅前で拾ったタクシーで雪乃の自宅へと戻って来た。
カバンから取り出した自分の家の鍵を握り締めたまま、動きが止まる。

「入る、よね?」
「うん。大丈夫」
「自分ん家の鍵を開けるのに、こんなに緊張するのは初めて」

鍵を握り締める小さな手のひらをこの手で包み込み、ゆっくりとドアノブに鍵を差し込んで、回した。

「ね?」
「よかった…んぅ」

無事に鍵が開き、部屋の明かりを付けると安心したように笑顔で玄関先で振り返るから、そのまま抱き締めて唇を重ねた。
直ぐ近い場所で視線が合った瞬間、見開いた瞳をぎゅっと瞼を伏せたのが見えて、こういうところも変わってない。と、安堵を覚える。

「……っふ…んっ、ひ、ヒロくん?」
「ホントは再会した瞬間に、こうして雪乃に触れたいと思ったんだ」
「えっ?」
「だから、我慢しない」
「よっ、酔ってない?」
「全く」
「お、お風呂に入っても、わっ!?」
「うん。お望み通り、先ずはお風呂に行こうか」
「い、いえ、あの、一人で…」
「それはダメ」

雪乃を抱き上げると、傍にある風呂場へと直行した。


「出逢った場所から、また始めようか」
「…居酒屋は?」
「アイツらがいたから、さっきのはノーカウント」
「ふふっ。やっぱりヒロくんは可愛い」
「……」
「怒った?」
「嬉しいワケないだろ」
「私は可愛いヒロくんも、カッコいいヒロくんも好き。だけど?」
「…言ったな?」
「?」
「半年分、抱かせてもらう」
「えっ?」
「今日まで一日たりとも雪乃を想うこの気持ちは、何一つとして変わらなかった」

自分でも不思議なぐらい、雪乃にまた逢いたいと、声を聞きたいと、笑顔が見たいと、抱き締めたいと、願いや想いは膨らむばかりだったんだ。
一夜の夢。
そんな簡単な軽い想いで、あの日、雪乃を抱いたわけじゃない。
別れが分かっていたからこそ、諦められなかったし、雪乃の存在全てを、心までもを手に入れたいと思った。


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