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酸化した世界で君と詠う

第5章 戻れない場所(黒の時代)


「聞け、お前は言ったよな、“暴力と血流の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない”と……」

「ああ、言った、言ったがそんな事は今」

「見つからないよ」

織田は囁きのような声で言った、太宰は織田を見た

「自分で判っている筈だ、人を殺す側になろうと、人を救う側になろうと、お前の頭脳の予測を超えるものは現れない、お前の孤独を埋めるものはこの世のどこにもない、お前は永久に闇の中を彷徨う」

その時太宰は、初めて気がついた
自分を理解している人間がいたということに、太宰はこれまで気付かなかった
生まれて初めて、心の底から知りたいことが出来た

「織田作…私は、どうすればいい?」

「“人を救う側になれ”」

「っ!?」

(人を救う側に……それは太宰さんはマフィアを抜けるってことになる) 

「どちらも同じなら佳い人間になれ、弱者を救い、孤児を守れる、正義も悪もどちらもお前には大差ないだろうが……そのほうが、幾分かは素敵だ」

「何故判る?」

「判るさ、誰よりもよく判る」



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