第5章 戻れない場所(黒の時代)
誰かに呼ばれるような気がして酒場に行った
「やァ、織田作」
太宰が嬉しそうに行った
「待ってたんだよ〜」
織田作は手を掲げて返事をし、太宰の隣に座った
「聞いてよ!織田作!太宰さんがまた自殺をしようとしてたんだよ!!」
「だから傷があるのだな」
「呑気過ぎない?」
彼の名は織田作之助、簡単に説明するとポートマフィアの構成員で人を殺さない謂わば殺さない男
「これが普通だろう」
「織田作さんの天然ぷりは今にはじまったことではないですよ、琴華」
「そうだけど〜…って安吾!?」
入口の方から声がした
振り返ると学者風の青年が階段から降りてくるところだった
「やあ安吾!暫く見なかったけど、元気そうじゃあないか」
太宰が笑顔で手を掲げる
「元気なものですか、東京出張からたった今帰ってきたばかりなんです。日帰りのね、古新聞みたいにくたくたです」
「マスター、いつものを」
安吾が太宰の隣に腰掛けるのとほぼ同時に、マスターが黄金色の液体を安吾の前に置いた
「いいなァ出張、私も遊びに行きたい……マスター、蟹缶おかわり」
「勿論仕事です」