第1章 月島蛍 ずっと欲しかったもの
月島side
『ありがとっ‥』
すこし恥ずかしそうに笑う顔
そのまま僕達は手を繋いで花火を見た
『あ〜綺麗だったね〜ずっと見てたかったな〜』
花火が終わって歩いていると突然先輩の携帯電話の着信音が鳴る
『あれ?お兄ちゃんだ!電話でてもいいかな?』
「もちろん。出てください」
『もしもしお兄ちゃん?どうしたの?‥え?飲み会?うん‥うん‥分かった!!』
お兄さんと電話しながら一度受話器を離してこちらを振り向く
「どうしました?」
『えっとね、お兄ちゃん急に取引先の人との飲み会が入っちゃったって‥それで月島君が良かったらうちに泊まっていかないかって言ってるんだけど‥どうかな‥?』
思ってもいなかった突然のチャンスに心臓が大きく跳ねる
「僕は‥大丈夫ですけど‥先輩はいいんですか?」
『いいのっ?!ありがとうっ!!』
そう言うともう一度受話器に向かって話しかけている
純粋に喜んでくれているみたいだけど、僕に下心がある事なんか全く気付いてないんだろうな‥
『お待たせっ!お兄ちゃんが月島君にお礼言っててねって!1人にするの心配だったから助かるって!』
僕が泊まりにくると聞いてパッと嬉しそうな顔に変わる
お兄さんもまさか2人でお泊まりを許してくれるなんて‥
実は先輩のお兄さんには一度だけ会った事がある
あんなにちっさい先輩とは違って僕と殆ど変わらない身長
すらりとした長い手足
整った小さな顔
先輩と同じ色素の薄い瞳と髪の色でモデルかと思うくらい
いかにもモテますって風貌だったけど
全然気取ってなくてめちゃいい人だった
兄妹揃って最強すぎるでしょ‥
僕のことも何故か気に入ってくれているみたいで有り難かった
というか‥泊まってもいいって?心臓がドキッと跳ねる
僕も急いで携帯を取り出して母親にメールする
『月島君のお母さんいいって‥?』
少し不安そうに見上げてくるけれどすぐに返信が返ってくる
「うん‥花澄ちゃんに宜しく伝えてってさ」
『わあっ!やった!!1人で夜寝るの怖いから‥月島君が来てくれるならすっごい嬉しいっ!』
そんなに嬉しそうな顔されたら少し胸が痛むな‥
今日は寝かせてあげられないかもしれないって言うのに
「僕も‥嬉しい」
色んな意味で‥
そんなことはつゆ知らずニコニコ顔の先輩