第3章 烏養繋心 秘密の恋人
「着いたぞ!散らかってるけど気にするな!」
『ありがとうございますっ!お邪魔します‥!』
ここが烏養さんのお家‥!
ドキドキとしながら玄関を開けて中に招き入れてもらう
散らかってるって言ってたけど
物が少ないお部屋はすっきりとしている
ただテーブルの上には沢山のビールの缶が乱雑に置いてあった
「いけねー!これ片付けてなかったな!昨日寝れんくってな!」
ビール缶をまとめてキッチンの流し台へと持っていく
烏養さんも昨日の夜寝れなかったんだ‥
それは‥何でだろう?
すぐに期待してしまう自分が少し嫌になる
「大したもんはないけど店の余りもんだ!それ食ったらシャワー浴びてこい!汗かいたろ?」
そう言うとテーブルの上に肉まんやサラダやぐんぐんバーが置いてある
『ありがとうございますっ!いただきます!』
「おう!好きなだけ食えっ!」
ニカッと笑う顔に胸がドキッとする
思わず目を逸らして
ほかほかの肉まんにかぶりつく
昨日は落ち込んであんまり食べれなかったから‥
『美味しいです‥!』
「そうかそうか!それは良かった!」
私の頭をワシャワシャと撫でると着替えをとりに部屋を出て行ってしまった
やっぱり烏養さんからしたら私なんかただの子供なんだろうか?
『‥だめだめっ!!もう諦めるんだった‥!』
好きな人のお家に来れただけで幸せだと思おう!
「これ‥俺のTシャツで悪いけど着てくれるか?流石に下着は用意出来ねーけど‥ごめん」
『っ!!はいっ!ありがとうございますっ!』
突然ひょこっと現れた烏養さんにびっくりして声が裏返る
「じゃあ俺バレー部の試合データ集めてっから、何かあったら呼んでくれ」
ご飯を食べ終えてお風呂場へと案内してもらう
『ありがとうございますっ!では‥お先にお風呂いただきます!』
「はいよ〜!」
そのまま手を振って烏養さんはお風呂場から出て行った
『烏養さんの香りだ‥』
シャンプーを泡立てると爽やかな柑橘系の香りがふわっと広がる
あぁ‥好きだな‥
初めて好きになった人
もう叶わない恋になっちゃったけど
じわりとまた涙が滲んでくる
『だめだめっ‥烏養さんも待ってるし早くあがらなくっちゃ』
急いでシャワーを浴びてお風呂から上がる