第22章 木葉秋紀 初めての
「ちょいちょい‥こっちきて花澄ちゃん」
合同練習の日
体育館に着くと音駒高校の黒尾さんがいて手招きされる
「1人‥?」
とっても背の高い黒尾さんが私に合わせて背中を屈めてくれる
『はいっ‥集合時間を勘違いしてましたっ‥早く来すぎたと思ったのですが‥黒尾さんも早いですね?』
こそこそと話す黒尾さんに合わせて耳元で小さな声で話すとふわりと肩にジャージがかけられた
「俺は花澄ちゃん待ってたの‥まさかこんなに早く来ると思わなかったけど‥いつも誰よりも早くきて準備とかしてくれてるっしょ?一番乗りなら2人きりになれんじゃねーかと思って」
『私をですかっ?!何かお役に立てることがあるでしょうか‥?このジャージは‥?』
どうして私を待ってくれていたのか分からず
屈んでもらっても目線の高い黒尾さんを見上げる
「いっつも誰かのジャージ着せられてるでしょ?俺のもんだって言わんばかりに‥だから今日はその気分を俺が味わってみたかったってわけ」
そう言うと大きな掌でぽんぽんと頭を撫でられる
「てなわけで、今日だけでも着てみてくれません?」
『えっ‥でも‥いいんですか‥?』
ずいっと近づく顔
おずおずと袖に手を通すと満足そうににんまりと笑う
「あんがとね‥最高っス‥‥あと記念に」
素早く私の肩を引き寄せて携帯でパシャリと写真を撮る
「待ち受けにしーちゃお」
「クロ‥何他校のマネージャーに手出してんの‥花澄ちゃんも嫌なら嫌って言いなよ‥優しすぎるとクロの毒牙に侵されるよ」
「研磨ぁ?!毒牙ってなによ?!人を悪者みたいに‥っ」
「でも‥赤似合ってるね‥なんか俺たちのもんって感じがして悪くない」
私の横を通り過ぎる研磨くんがふっと目を細めて笑う
「俺の事無視して口説くのやめてくんない?!今日は俺のもん‥」
「へぇ‥今日は誰のもんだって?」
『わあっ?!木葉先輩‥っ?!』
気付けば背後にいた木葉先輩が私の肩に肘をつくからずしっとした重みに身体が沈みそうになる
「梟谷の器用貧乏こと木葉くんじゃないすか‥」
「誰が器用貧乏だっ!お前に言われたくないっつーの!」