第21章 赤葦京治 僕の先輩
赤葦side
すぐに振られるかもしれないと思ってたから
その言葉に少し期待して心臓がドキッとした
「はい‥お願いします」
ちゃんと考えてくれるって
そんなところもやっぱり先輩らしいなと思うとつい顔がふっと綻んでしまう
『じゃ‥じゃあ‥そろそろ帰ろっか?私夜ご飯の準備もしないといけなくって‥』
腕の中でもそもそと動く小さな身体
「帰したくない‥って言ったらどうします?」
『えっ?!どう‥しましょう‥?』
「顔真っ赤ですね‥可愛い‥」
『っ!!』
さらりと柔らかな髪を耳にかけてやると真っ赤に染まった顔が少し見える
「途中まで送っていきますよ」
コートの中から先輩を解放して
ゆっくりと並んで歩き出す
「じゃあ‥また明日部活で」
『うんっ!じゃあまたっ!』
大きく手を振る先輩
ふわっと花が咲くような笑顔
この笑顔を見るといつも元気になれる
「柔らかくて‥いい香りがしたな‥」
腕の中に残る余韻を感じながらゆっくりと帰路に着く
家に帰るまでの道も
ずっと心臓はドキドキとうるさいままだった
「アカーシ!花澄もうきてる?今日一日中なーんか様子変なんだよ!」
翌日の部活で
バレーシューズを履いていると木兎さんが少し遅れて体育館に入ってくる
「まだ来てないみたいです。それより様子が変とはどういう事ですか?」
「それがさー!なんかぼーっとしてて、たまに顔が真っ赤になんの!授業中ずっと見てたけどずーっとそんな感じで心配なの!」
「授業中ずっと見てたんですか‥?」
「うんっ!だってかわいーもん」
そりゃそうだけど‥
何て言おうか迷っていると入り口からひょっこりと先輩が顔を出す
「先輩‥大丈夫ですか?体調が悪いなら今日は無理せずに‥」
駆け寄って行くとパッと顔が赤くなってギクシャクと歩き出す
『だ‥だいじょうぶだよっ!元気っ!とっても!』
大きな目がきょろきょろと動いて
視線が絡み合わない
「カタコトなってんし‥手と足同時にでてるけど?」
木葉さんもきてじっと先輩をみつめる
『ええっ?!そうかなっ?!』