第21章 赤葦京治 僕の先輩
練習終わり
皆と別れた後に携帯を学校に忘れてきた事に気付いて走って取りに帰る
ふと立ち止まる体育館の前
見慣れた景色
しんどい事もたくさんあったけど
皆と一緒に乗り越えてきた
楽しい時間も
たくさん過ごしてきた
涙も
笑顔も
たくさん
胸に抱えきれない程の素敵な思い出達についじんわりと目頭が熱くなる
私達は3年生だから
もうあと少ししかこの時間を過ごす事ができない
思いに耽っていると聞き覚えのある声がして振り返る
そして気が付いたら私は赤葦くんのベンチコートの中にすっぽりと包み込まれていた
『赤葦くん‥?』
背中に感じる熱がぽかぽかとして
すぐに体温も上がってくる
「俺‥ずっと白鷺先輩の事が好きでした」
『えっ‥?』
「最初は‥憧れみたいな存在でした‥見てるだけでいいって思ってたのに‥いつの間にか、触れてみたいって思うようになりました」
包まれたベンチコートの中
ギュッと赤葦くんに抱きしめられる
「そう思いだすとどんどんと気持ちは欲張りになっていって、先輩の事がどうしても欲しくなりました」
耳元で聞こえるいつもとは少し違った
熱のこもった真剣な声に顔が熱くなる
ドキドキと心臓の音が早く感じるのは急にあったかくなったからだろうか?
それとも真剣な赤葦くんの声のせい‥?
「木兎さん達と仲良く話してる姿見ると胸が苦しくなって‥先輩を俺だけのもんにしたいって思いました」
次々と伝えられる言葉に耳まで熱くなっていくのがわかる
『あの‥っ、私‥』
赤葦くんはとっても真面目で
2年生なのに副主将を任されるくらいしっかりしてるところが素敵だなって思ってた
落ち着いているけど
木兎くんを見る時の目はキラキラしててなんだか可愛かった
私も好き‥だけど
この気持ちが赤葦くんが伝えてくれている気持ちと同じなのか
強く抱きしめられる身体に心臓がドキドキと煩くて
突然のことに頭が全然まわらない
なんて答えたらいいか少し言葉に詰まるとさらにギュッと抱きしめられる
「俺と付き合ってください‥」
『っ!あ‥ありがとう‥!ちゃんと考えてからお返事してもいいかな‥?』