第1章 月島蛍 ずっと欲しかったもの
月島side
『何食べよっか?ベビーカステラは食べたいし‥綿菓子もあるかな?!りんご飴と‥』
「先輩が食べたいもの一緒に食べましょう。それより‥そんなにはしゃいでるとこけますよ?」
子供のように目を輝かせて嬉しそうに歩く姿が可愛い
『うんっ!って‥わぁっ!』
言ったそばから小石につまづいて転けそうになっているから慌ててキャッチする
「っ‥セーフ‥今日は履き慣れてない下駄だし、はぐれても困るんで手繋いでおきましょうね?」
『はっはい!ごめんなさい。。』
少ししゅんとする姿が本当に子供みたいで吹き出してしまう
「ふっ‥本当に怒られた子供みたい‥先輩が怪我しても嫌だし、手繋いでたら他の男に声掛けられる事もないでしょ?」
優しく頭をぽんぽんと撫でてやると可愛い顔で見上げてくるからまた心臓がドキッとする
きっと今日は心臓が何個あっても足りない気がする
お祭り会場に着いてからは案の定みんなが振り返って先輩の事を見ている
そんな皆んなの視線にも気付かず、当の本人は何を食べようか真剣に屋台をみているからさすがだなと思った
「え、待って?!あの子めっちゃ可愛くない?!てか隣の彼氏でかっ!よくみたらイケメンだし‥最強カップルじゃん?!」
「お前声大きいっ‥確かに‥美男美女すぎるな‥」
ギャルのカップルが通り過ぎた後にこちらを振り返って大きな声で話しているのが聞こえてくる
カップル‥そうだよな‥当たり前かもしれないけど
周りからそう見られている事が嬉しかった
『?月島君なんだか嬉しそうだね!食べたいものあった?』
少し首を傾げながらニコニコと聞いてくるこの彼女こそが僕が恋焦がれてずっと手に入れたかった人だから
「あれ‥ベビーカステラ、先輩食べたいって言ってましたよね?」
『あっ!!本当だ!!』
ベビーカステラの前まで行くとすごい行列が出来ていた
「僕買ってくるんで、先輩はそこの木の下で待っててもらっていいですか?そこなら人通りも多いし、なんかあったらすぐに電話して下さい」
『えっ?!いいよー!私も一緒に並ぶっ!!』
「人多いし疲れちゃいますよ?これから花火もみるんでしょ。僕が買ってきますから‥ね?」
小さな子を宥めるように優しく言うと小さく首を縦にふる
『分かった!ありがとうっ‥』
先輩をその場に残して売り場へと歩いていく
