第1章 月島蛍 ずっと欲しかったもの
月島side
家に帰ると母親が薄紫の浴衣を持って走ってくる
「おかえりなさいっ!明日花澄ちゃんとのお祭りよね?ちょうど昔お兄ちゃんが着た浴衣があって良かったわ〜!」
「ただいま」
玄関で靴を脱いでいると母親が嬉しそうにまだ話している
「花澄ちゃんの浴衣姿絶対かわいいでしょうね?また写真見せてよ〜!」
「はいはい‥」
実は一度だけ先輩がうちにきた事があるけど
母親も、帰省していた兄もえらく先輩の事を気に入っていた
天性の人たらしは本当にすごいと思ったくらい
兄に至っては僕がこんないい彼女を‥って泣いて喜んでいたほどだ
恥ずかしいからやめて欲しかったけど
夜ご飯を食べて、お風呂に入って‥寝る前に先輩と少しだけ電話をする
『じゃあ‥つきしまくん‥またあしたね?おやすみ‥』
ふにゃふにゃと眠たそうな声が可愛かった
「おやすみなさい‥また明日‥」
部活の疲れもあって僕もすぐに目を閉じた
翌日
土曜日だから今日は午前中だけ部活をして帰ってきた
家に帰ってすぐにシャワーを浴びる
浴衣に着替えて慣れない下駄を履いて先輩の家へと向かう
どんな浴衣着てくるんだろ‥?
まぁ先輩の事だから何を着ても可愛いに決まってるんだけど‥
そんな事を思いながらもドキドキしてインターホンを鳴らす
暫くするとパタパタと音が聞こえてきてガチャっと勢いよく扉が開く
『月島君お待たせっ!!』
「ーっ!!」
あまりの可愛さに一瞬言葉を失う
いつもは高い位置に一つに結ばれている髪の毛が今日はゆるく編み込まれていて後れ毛がふわりと巻かれている
白い花の飾りもついていて華やかで綺麗だ
清楚な先輩にぴったりの白い浴衣には淡い水色と藤色の花が大きく咲いている
少し後ろに抜かれた襟から見えるうなじがとんでもなく色っぽい
これは想像以上だった‥正直他の奴らには見せたくないくらいだ‥
『わぁっ!!浴衣すっごい似合ってるね!!大人っぽくてかっこいい!』
先輩が少し頬を染めて僕のことを褒めてくれる
「先輩こそ‥浴衣似合ってますよ。可愛すぎて他の男に見せたくないです」
先輩の小さな手をギュッと握ると照れたような声で小さく返してくれる
『えっ?!嬉しいっ!ありがとうっ!』
「じゃあ‥そろそろ行きましょうか?」