第20章 月島蛍 この腕の中に閉じ込めて
蛍が結婚発表をした今日
試合会場に足を運ぶと色んな人に声を掛けられる
「まさかあのチーム1恋愛に興味のなさそうな月島選手に俺たちの花澄ちゃんがとられるとはなー!!」
「めでたいけど涙が出るぜー!!俺だって好きだったのによ〜!」
「ほんとめでたいついでに!今日の試合も勝ってくれよー!!期待してるぞー!!」
「可愛い奥さんもらったんだから頑張れよー!!」
蛍がコートに姿を表すと皆が一斉に声をかける
改めて蛍はチームにもファンにも愛された素敵な選手なんだなって嬉しくなる
試合が始まると
会場の明るい空気も一転して一進一退の攻防に皆が息を呑む
相手の選手はVリーグの中でもトップを誇るパワープレイに長けた選手だった
蛍に勝るとも劣らない長身の選手がコートを蹴り上げて空高く舞う
力強く振り落とされる腕がボールを捉えて
すごい音とともに叩き落とされるかと思いきや
すっと蛍の長い腕が伸びてきて
逆にそのボールを相手コートへと叩き落とす
「っ!!ドシャットーーーーーー!!」
見事に決まった蛍のブロックに仙台フロッグスのファンが一斉に立ち上がる
『蛍っ‥すごいっ!』
嬉しくて私も立ち上がるとパッと振り返って私を指さす蛍と目が合った
『っ!?』
胸元をぎゅっと握る手
そこには試合中はつけられないけれど
ネックレスに通したおそろいの結婚指輪がある
目があうと珍しくふわぁっと蛍の顔が綻んで満面の笑みを浮かべるから
会場がまたざわめき出す
「月島選手のパフォーマンス初めて見たっ‥!!」
「なにあの笑顔っ‥どんだけ奥さん好きなんだよっ!」
蛍のパフォーマンスと
あの笑顔に顔が熱くなって心臓がドキドキと騒ぎ出す
『かっこいいな‥』
またコートに向かって走っていく後ろ姿をみながら
初めて会った時の蛍をふと思い出す
バレーボールが嫌いなわけじゃ無さそうだったのに
どこか諦めたように振る舞っていた
圧倒的な才能の日向くんを前に
僕には無理だと線を引いていた
そんな蛍が
こんなにもバレーに熱くなっている
自然と涙で視界が滲んできた