第20章 月島蛍 この腕の中に閉じ込めて
先輩に支えられて席を立ち上がった後
選手のみんなも一緒に送っていくって言ってくれて
結局みんなでお店を出る事になった
『こまったな‥身体に力入らない‥家に帰るまでになんとかしないと‥』
昔一度烏野バレー部みんなと
社会人になってから同窓会をしたことがあって
その時にお酒を飲んだ私は蛍に2度と他の人の前で飲むなって言われてた
『バレたらおこられちゃう‥』
お酒で火照った身体が熱い
ぼーっとする頭をなんとか冷ましたくてスーツのジャケットを脱いで
シャツのボタンをいくつか開けると胸元が少し涼しくなった
みんながお手洗いやお会計を済ませてくれている間
お店の椅子に座っていると椅子が振動している気がする
しばらくしてそれが自分の鞄の中の携帯電話だとようやく気付いて慌ててでる
電話の向こうの蛍の声のトーンが低い
山口くんとなにかあったのかな‥?
とても焦ったような声で今すぐ迎えにいくと言って電話を切ってしまった
「お待たせ〜!じゃあ行こっか!もうタクシー店の前きてるって」
『あのっ‥やっぱりわたし一人で帰れます‥!』
蛍は有名人だし
チームメイトの皆んなにも私達のことは話していないみたいだったから
今から迎えに来てくれるなんて言えなかった
「そんなふらっふらな足取りでどうやって一人で帰るんですか〜それにこんな可愛い子一人で帰らせれないっすよ!」
両隣から腰に手を回されてそのままゆっくりとタクシーまで誘導される
待っててって言われたのに‥
どうしようっ‥
「‥待った‥っ!!!」
「「っ?!月島っ?!」」
私達の前に突然蛍が現れて行く手を阻む
『蛍っ‥!』
「えっ‥蛍‥?」
無意識に名前を呼ぶと周りの皆が私と蛍を交互に見る
「僕の彼女なんで‥その手、離してもらっていいですか?」
蛍の静かに怒ったような低い声に
チームメイトの人達と
先輩の肩がびくりと揺れて
私から手が離れていく
「マジかっ‥月島‥興味ないみたいなフリして‥」
「僕達高校生の時から付き合ってるので。」
人前であまりそういう事を言わないからびっくりして蛍の顔を見る
「何みてんの‥帰るよ」