第20章 月島蛍 この腕の中に閉じ込めて
月島side
久しぶりに山口と夜ご飯を食べに来て
ふと携帯をみる
先輩と取引先の人とご飯行くって‥まさか男ばっかりじゃないよね?
お酒をゆっくりと喉に流し込みながら返信を打つ
「花澄さんからメール?」
「取引先の人とご飯らしい」
「そっか〜まぁ仕事の席なら安心か‥って、ツッキー相変わらず機嫌悪そうだね」
山口もぐいっとお酒を飲みながら僕をみてふっと笑う
「男が多い職場だからね‥しょっちゅう口説かれてるみたいだし、本人気付いてないけど」
「花澄さん鈍感だもんな〜!それにバレーファンの中でも可愛すぎるファンって有名だもんね!
そうして元チームメイトとの飲みは夜遅くまで続いて
その間もチラチラと携帯を見る
取引先とのご飯だから仕方ないかもしれないけど
全く連絡が来なくなって嫌な胸騒ぎがする
「じゃあまたねツッキー!バレー頑張って!!また試合観に行くよ!」
「山口もね‥じゃあまた」
大きく手を振る山口に手を振って電話をかけてみる
「なんででないんだよ‥」
しつこいくらいに電話の呼び出し音をならすと
暫くしてようやく電話が繋がった
『けいくん‥どうしたの‥?』
いつもののんびりとした喋り方がさらにゆっくりと間延びして僕の名前を呼ぶ
こんな喋り方をする時は
酒に酔っている時だ
あれほど外では飲むなって言ったのに
「‥今どこ?」
『えきまえの‥ごはんやさん‥』
後ろからざわざわと男の声が聞こえてくる
「迎えにいくから待ってて」
『それがね‥ひとりでかえれますよ〜っていったんだけど‥』
受話器の向こうからまた男の声が聞こえてくる
「タクシー呼ぶからもう少し待っててね!ホテルまですぐだから」
こいつ‥
介抱するフリして抱くつもりか‥
我を見失いそうな程怒りで身体が熱くなる
「店の名前は?」
『え‥えっと‥』
「早く!」
つい大声を出す
『orangeっておみせ‥』
同じチームの選手達もお忍びで行く店の名前だ
幸い今いる場所からかなり近い
「今すぐ行くから絶対その場から動かないこと!分かった?!」