第19章 月島蛍 分からせたい
月島side
今日に限ってコーチに呼び出されて
他の男達と帰っていく花澄さんの後ろ姿をちらりとみる
「‥心配か?」
そんな僕をみて烏養コーチが肩をすくめる
「すみません‥大丈夫です」
「まぁ白鷺はもう少し危機感ってもんを持ってくれるといいんだがなぁ」
ぽりぽりと頭を掻きながら苦笑いをする
花澄さんはあんな容姿をしてるから
もちろん試合会場でも誰よりもよく目立つ
そしてあんな性格だからすぐに誰の懐にも入り込んで
あっという間に好かれてしまう
そんな花澄さんをさりげなく守ってくれてるのは烏養コーチ達だった
コーチとの打ち合わせを終えて
走って校門へと向かっている最中にも聞こえてくる話題
「お前今日みたか?!あのニーハイ姿やばくなかった?!」
「みたみた!短いスカートからさ、チラッと見える白い太腿‥バレー部の誰かから借りたかしんねーけど、でっかいセーターがまたやべえのなんのって‥」
「バレー部の誰かじゃなくて、彼氏のセーターなんで」
「「っ?!」」
煽るようにニヤリと笑ってその場を立ち去る
聞き流しておけば良かったものを
僕は花澄さんのせいでこうやって嫉妬心に振り回されている
全部花澄さんのせいだ
やっと手に入れたと思ったのに
付き合ってからも心配は増すばかりだ
走って校門まで駆けつけると山口の手をギュッと掴んでいる姿がみえてため息が漏れる
「ほんとに‥覚悟しときなよ」
息を切らして2人の元へ行き間に割り込むと何かを察したように山口が走って帰っていく
そんな山口とは対照的に
僕がなぜこんなにも怒っているのかわかっていない様子の花澄さんがきょとんと首を傾げる
『わっ‥待って蛍くんっ‥!』
華奢な手首を掴んでズカズカと歩きだすと慌てて小走りでついてくる
『蛍くん‥怒ってる‥?』
玄関のドアがパタンとしまったのと同時に花澄さんを壁に閉じ込める
「どうして僕が怒ってると思います?」
『っ‥わかりません‥』
僕につられて敬語になる花澄さんがおそるおそる見上げてくる