第19章 月島蛍 分からせたい
「またそんな可愛いこと言って‥とりあえずこれ巻いててください。前からは見えるけど何もないよりマシ」
機嫌が悪そうに顔を顰めながら月島くんが着ていた白いセーターを脱いで私の腰に巻きつけてくれる
『えっ?!あ‥ありがとうっ!じゃあ私そろそろ教室戻るね!』
まだ少し何か言いたそうな月島くんに手を振って急いで教室に戻る
なんとか授業には間に合って教科書とノートを広げる
それにしても今日はちょっと寒いな‥
10月初旬
まだ少し暑さを感じる日々だったのに
今日は少し肌寒くて思わずふるりと震える
『っくしゅ‥』
空気の換気の為に少し開かれた窓からふいてくる冷たい秋風に身体が冷えてくしゃみが出る
「白鷺大丈夫かー?寒いなら腰に巻いてるセーター着ろよ〜」
先生がチョークを持ちながら私を指差してまた黒板に向き直る
『はいっ‥大丈夫です!』
月島くんが腰に巻いてくれたセーター
寒いから着てもいいよってことだったんだ‥!
きゅっと結んでもらった袖を解いて
ブカブカのセーターに手を通す
『ふふっ‥おっきいけど蛍くんの香りがする‥』
洗い立てのタオルのような爽やかな石鹸の香り
月島くんの優しさが嬉しくて休み時間になってからメールを送る
『セーターありがとうっ!おかげで助かったよ!また洗って返すね!‥送信っと』
さっき会った時の月島くんはなんだか怒ってた気がしたけど
私の事を心配してセーターを貸してくれた月島くんの優しさが嬉しかった
そのままお言葉に甘えて一日セーターを着て過ごして
放課後
今日は練習がなくてミーティングだけだから
体操服に着替えずに制服のまま体育館に向かった
『お疲れ様です!』
「おー‥ぉおっ?!」
一番乗りで来ていた菅原さんに挨拶をするとピシッと固まってしまった
『スガさん‥?』
「待って‥?!刺激強すぎないっ?!今日一日その格好で過ごしたのっ?!」
『えっ?!そ‥そうですけど‥』
菅原さんの頬が赤く染まって
ふいっと顔がそらされる
「はぁ‥無防備すぎるとは思ってたけどここまでいくとさすがに月島に同情するべ」
『月島くんですかっ?』