第19章 月島蛍 分からせたい
朝はいつも時間との戦いだ
両親が海外で働いている私は少し歳の離れたお兄ちゃんと2人で暮らしている
会社に行くお兄ちゃんと自分のお弁当を作って
洗濯を回して
どんなに早起きをしても気が付いたら時間がなくなっている
『お兄ちゃんっ!忘れ物ない?シャツちゃんと予備の分もいれた?』
「色々準備ありがとな〜!かわいい妹をおいて出張なんか‥‥出来るだけ早く帰ってくるからな!」
『うん!待ってるから気をつけて行ってきてね!』
「はー‥まじで俺の妹かわいい」
『お兄ちゃん時間っ!』
「うわやばっ!行ってきまーす!」
仕事柄出張の多いお兄ちゃんがキャリーケースを引っ張って慌ただしく出て行った
『わたしも急がなくちゃっ‥!』
もう少ししたら幼馴染の大地が迎えに来る時間が迫っていて
慌てて制服に着替え始める
『あれっ‥?靴下‥ない‥っ?』
いつも学校用のハイソックスをしまっている棚を掻き分けるけれども一つも入ってない
そういえばここ数日朝練もあって
いつもよりもさらにバタバタしてたし
数日出張に行くお兄ちゃんの洗濯を優先してやっていたから
自分の洗濯物を後回しにしていた事をすっかり忘れてしまっていた
もう大地もきちゃうしっ‥
どうしようかと焦っていた時に
昔間違えて購入した靴下の存在を思い出す
『確かここにしまってたはず‥‥っ』
普段あまり使わないお洋服をしまっている棚からそれを見つけて引っ張り出す
制服にこんな靴下を履いている子はなかなかいないけど
今は迷っている時間の余裕はない
いつものハイソックスよりも随分長いソックスをぐいっと引っぱりあげると太腿まで伸びる
鏡で姿を確認する暇もなく玄関のインターホンがなって慌てて飛び出すと大地が立っていた
『大地おはようっ!』
「おは‥よ?!靴下どうした‥?」
『え‥靴下‥変かなっ?!』
少し顔を赤くした大地がこほんと咳払いをして目を逸らす
「全然変じゃない‥けど」
『けど‥?』
「少し、目のやり場に困る」
『?』
「まぁいいけど‥そーゆう目で見るやつもいるから、今日は気をつけろよ?」