第18章 二口賢治 素直になれない
『二口くんっ!ナイスプレーだったね!』
「ん」
今日は烏野高校との練習試合
休憩時間にタオルを持って駆け寄ると
こちらをみずにバッとタオルを受け取る
あの日から恋人どうしになった私たちだけど
相変わらず二口くんは私にだけそっけない
黄金川くんと談笑する後ろ姿
ズボンの中に両手を突っ込みながら揶揄うように楽しそうに話している
「そんなにじっと見ちゃって‥二口と付き合ってるって噂本当?!」
そんな姿を見ながらタオルを畳んでいると急に耳元で話しかけられてビクッと振り返る
淡いグレーの髪に
泣きぼくろが印象的な烏野の副主将
『菅原さんっ!』
「こんな可愛い彼女がいながらあんなそっけない態度とんのかよー!」
こそこそと耳打ちする菅原さんの距離が近いから吐息が耳にかかってくすぐったい
『っ‥なかなか部活では‥いつもあんな感じです‥』
ちょっとは照れたり
してくれたら嬉しかったりするけど
ちらりと二口くんをみると
眉を寄せて少し機嫌が悪そうにこちらをみていた
そんな二口くんをじっと見た後
菅原さんの身体がさらに近くなる
「じゃあ菅原さんがいー事教えてやんべ」
にやりと笑ってから
こそこそと話し出すから身を寄せる
「そろそろ休憩おわりじゃないっすか?」
「‥」
『わっ?!』
菅原さんから引き剥がされるようにして
二口くんと青根くんが私の前に立つ
「伊達の鉄壁ねぇ‥そんな顔してられるのも今のうちだけだからな〜」
そういうといたずらっ子みたいな笑みを浮かべて
烏野ベンチに帰って行った
「お前はどっちのマネージャーだっつの‥」
相変わらず不貞腐れた表情のまま私の目もみずにコートへ歩いていく
あんなに好きって言ってくれたのは夢だったのかと心配になるほど毎日そっけないけど
次の休憩時間になった時に
さっき菅原さんに教えてもらったことを実践してみることにした
黄金川くんにまた絡みにいく二口くんの後ろ姿
長い腕がまたユニフォームのズボンに突っ込まれている
「みんなの前でやってみ?絶対喜ぶから!」
菅原さんの言葉を思いだす