第18章 二口賢治 素直になれない
二口くんに出来るだけ迷惑かけないように
話さなくちゃいけないことは他の人に伝えてもらうようにして
なんとか距離をとる度に
心がいっぱいいっぱいになっていった
今は二口くんの顔見るだけでも泣いてしまうかもしれない
『お疲れ様でした!』
部活終わりに片付けを済ませて
そそくさと帰ろうとすると二口くんに話しかけられる
「話したい事あるから、着替えたら校舎裏で待ってて」
『っ!わ‥わかった!』
ずっとそらされてきた目に
真っ直ぐに見つめられて心臓がドキッと跳ねる
でも
きっと話したいことって言うのは
私にとって耳が痛いことのはず
『やだな‥』
面と向かって
嫌いって言われちゃうと私はきっと耐えられない
重たい足をゆっくりと動かして校舎裏へと向かうとすでに二口くんが待っていた
なんとか
目を合わせないように
早く話を終わらせて
いつもみたいに切り抜けようとすると辛そうな顔をした二口くんの腕の中に閉じ込められる
期待しても辛いだけなのに
気付いたらずっと胸の奥にしまい込んでいた気持ちが口からこぼれ落ちて
慌てて腕の中から逃げようとすると
逞しい腕に苦しい程にギュッと抱きしめられる
「俺のせいで勘違いさせてごめん‥!本当は‥ずっと前から好きだった」
『‥‥えっ?!』
バッと顔を上げると顔を赤くした二口くんの真剣な瞳にまっすぐ見つめられている
「今まで散々素っ気ない態度とっときながら‥こんなタイミングで‥ずるくてごめん」
『え‥と‥』
突然の事に理解が追いつかず
体温がどんどんと上がっていくだけで
頭は真っ白になっていく
「ずるいついでにもう一つ‥俺の事好きって言ってくれるなら‥」
見上げた二口くんの顔が
どんどんと近付いてきて
今にも唇がふれてしまいそうなくらいの距離に息が止まりそうになる
「俺と付き合ってよ」
『〜っ!』
「他のやつに渡したくないから‥俺のもんになってよ」
こんなにも素直で
まっすぐに想いを伝えてくれる二口くんは初めてで
目が離せなくなる
『お‥お願いしますっ‥んぅっ‥』