第18章 二口賢治 素直になれない
二口side
こんな顔をさせてるのは確実に俺の今までの行いのせいだ
「違う‥怒ってるんじゃなくて‥」
両手で思わず掴んだ肩が小さく震えている
素直に謝って
本当は花澄の事が好きだと伝えれば良いのに
ずっと好きだったんだと
ただそれだけなのに
この場に及んでも恥ずかしさと
素直になれない捻くれた俺の心が
次の言葉をうまく紡ぎ出せない
『私‥きっとこれ以上いても‥』
大きな目がパッとそらされて
また目線が合わなくなる
「ごめんっ‥俺が悪かったから‥頼むから俺の事避けないでくれ‥」
『なんで‥二口くんがあやまるの‥?』
そらされていた目が
また俺の方を向いて
やっと
しっかりと目線が絡み合う
「‥今まで素っ気ない態度とってごめん‥」
『だ‥大丈夫っ!嫌われてるの‥分かってたから‥だからこれ以上二口くんにはあんまり近付かないようにするから‥』
やっと絡み合った視線もすぐにそらされて
俺の腕の中から抜け出そうとする小さな身体
「頼むっ‥俺の話聞いて‥頼むから‥」
このまま逃してしまうと
二度と俺の目を見てもらえないような気がして思わず花澄の身体をギュッと抱きしめる
『っ‥』
抱きしめた腕の中
ビクッと身体が強張るのがわかる
『‥聞くの‥怖い‥』
ぽつりと聞こえる小さな声
「怖くなんか‥『好きだからっ‥‥二口くんの事‥好きだから‥直接嫌いって言われるの怖くて‥聞きたくない‥』
「っ?!」
俺の次の言葉を遮るようにして
振り絞ったような震えた声が思いもよらない言葉を告げる
「好き‥‥?俺を‥?花澄が‥?」
『っ!な‥なんでもないっ‥困らせるから伝えるつもりなかったの‥ごめんなさい‥』
「俺の片想いじゃなかったのか‥?」
さっきまで深く沈み込んでいた心が
急にドキドキと激しく騒ぎ出す
『二口くん‥?』
未だ何が起こったか分からない様子の花澄の身体をさらにギュッと強く抱き締める
「俺のせいで勘違いさせてごめん‥!本当は‥ずっと前から好きだった」
『っ?!』
抱き締めた身体がびくっと揺れる