第18章 二口賢治 素直になれない
楽しそうにぐしゃぐしゃと作並くんの頭を撫でる二口くんの顔を見て胸が少し苦しくなる
二口くんは私が話しかけると笑顔が消えて
すぐにそっぽを向いてしまう
「元気‥ない?」
青根くんが心配そうに私の顔をみるから慌てて首をぶんぶんと横に振る
『げ‥元気元気っ!お昼にメロンパンもたべたし!ご機嫌だよ!』
「ご機嫌‥か」
ふっと青根くんの表情が緩む
これは結構笑ってる時の顔だ
青根くんは表情があまり変わらないから
周りから怖がられちゃうことも多いみたいだけど
意外とよーく見てると表情が変わってることがわかる
『ご機嫌かどうか聞いてないよねっ‥謎の情報をごめんね!』
「元気ならいい‥」
ドリンクを渡すとまだ少し笑いを堪えている
青根くんと話しながらちらりと二口くんの方をみると相変わらず楽しそうな顔
わたし‥やっぱり嫌われてるのかな
部活中だけじゃなくて
クラスでも二口くんは私にだけそっけない
2年A組
二口くんと青根くんとはクラスも同じで
席も近いけど
私が話しかけると急に目が合わなくなって
そっけない言葉だけが返ってくる
直前までとっても楽しそうにお話ししていたはずなのに
何か私が嫌われるような事でもしちゃったなら謝りたい‥
翌日の休み時間
勇気を出して二口くんの方へ歩いて行く
「二口お前、顔はいーのに口は悪いよなぁ〜!顔が無駄にいいのが腹立つ!!」
「性格が良くて背も高いし顔もいいって?」
「言ってねーっての!」
二口くんのまわりにはいつも男の子も
女の子も集まっていて
楽しそうに話している
『あのっ‥お話中にごめんね‥!部活の事で‥これ預かってて‥』
茂庭さんから預かった
練習メニューを渡そうとすると
またふいっと違う方を向いてしまう
「‥もらっとく」
『う‥うんっ!お邪魔してごめんね‥!』
胸がずきっと痛んでその場から急いで離れる
やっぱり私は二口くんに嫌われてしまってるみたい‥
『がんばれない‥かも』
仲良くなりたくて
何度かお話ししようとしてみたけど全く変わらなくて
涙がじわりとにじむ