第17章 夜久衛輔 攻めの姿勢
練習が再開して
さっきよりもさらに気合いの入った様子の夜久くん
真剣な顔
どこまでもバレーに真摯な姿はずっとみていたいくらい美しかった
「まーたやっくんの事みてんの?分かりやすいね〜」
『み‥みてるけど‥それはマネージャーとしてっ‥』
綺麗な姿勢でふわりとボールをあげる姿に見惚れていると
鉄朗が隣にやってくる
「はいはい‥マネージャーとしてですか‥それならもっと俺の事も見てくれてもいいんじゃないの?」
背の高い鉄朗が腰に手をあてて背中をぐっと屈める
目の前に近付く顔
『鉄朗‥?』
「昔っから髪長いの好きだったから‥また俺のために伸ばしてよ」
長い指が短く切った私の毛先をなぞる
『っ‥』
少しくすぐったくてぴくりと体が反応する
「近いっ!」
『わぁっ!』
私と鉄朗の間にさっと割り込んできて
夜久君が私の目をじっと見る
『な‥なにっ‥?』
「危機感!警戒心!」
『は‥はいっ!』
いつも怒られるから大きな声で返事をする
「ぶっ‥なにそれっ‥」
「こんな可愛いくせに隙がありすぎるから鍛えてんの!」
「鍛えるって‥ほんとやっくんらしいわ!まぁでも危機感と警戒心ゼロなのは昔っからだよな〜無防備すぎるのもなんとかならないもんかね」
鉄朗と夜久君が話しているのをみていると後ろからリエーフくんにガバッと抱きつかれる
「花澄さんっ!俺のアタックみました?!すっごいのが打てたんですよ!」
『わわっ‥!見てなかった‥ごめんねっ!』
体格の大きいリエーフくんの体重によろけるとさっと夜久君に支えられて
鉄朗がリエーフくんを私から引き剥がす
「リエーフ!抱きつくなって何回も言ってるだろうが!」
「だってー!」
「「だってじゃない!」」
「花澄も大変だね‥」
リエーフくんと2人が言い争っている横を研磨がちらりとみてから通り過ぎていく
こんな騒がしくて
楽しい日々も三年生の私達はあと少し
楽しさの中に少し
寂しさがたまに顔を出す