第15章 照島遊児 奪いたい
照島君と別れて早足で歩き出す私の頬を温かい涙が濡らす
諦めるって
応援するって決めたところなのに
カバンに入れていた携帯からメールを受信した音がする
「部活お疲れさん!まだ白鷺さんと付き合えたって実感なくて‥なんも用事ないのにメールしてごめん!次のデート楽しみにしてる!」
つい最近お付き合いを始めた澤村さんからだった
こんなに優しい彼氏も出来たのに
照島君の事を諦められない私って‥
澤村さんにも
照島君にも失礼だ‥
だって照島君には好きな人がいるのに‥いつまでも私がこんな想いを抱いていたら迷惑に決まってる
つい先日
部活に行く前に教室に忘れ物をしていたのを思い出して慌ててとりにいった私の前に現れたのはクラスの綺麗な女の子
「白鷺さんって照島の事好きなの‥?」
照島君と同じように明るく染められた髪
耳にピアスをして
綺麗にお化粧をしたその子はきっと私よりも照島君の隣が似合いそうだった
『えっ?!な‥なんでっ?!』
突然の事に取り乱して立ち上がるとその子がどんどんと近づいてくる
「よく2人でいるとこ見かけるからさ‥でも照島はさ、烏野のマネージャーさんの事が好きみたいだし!それに実は私も照島の事狙ってんだよね!」
私のことを好きだと言ってくれるやんちゃな笑顔を思い出して胸がズキンと痛む
「だからさ‥応援してくんない?!白鷺さんって照島じゃなくても超モテるし?そんな可愛いんだから他に彼氏出来るよね??お願いっ!!」
ギュッと両手を掴まれてその子の顔をみると
断れる空気じゃなくなってしまっていた
『う‥うんっ‥わかった!応援するね!』
「ありがとーっ!じゃあまたねー!」
颯爽と彼女が教室を出た後に一気に力が抜けて椅子に座り込んでしまった
『はぁっ‥私‥こんなにも照島君のこと‥好きになってたんだ‥』
私の事を好きだと言ってくれる照島君
付き合おうぜーっ!て飛び跳ねながらやってくる姿を想像できる
それでも私が一歩を踏み出せなかったのは
今はもう部活を引退してしまった先輩からの一言だった
「照島はちゃらいから、本気にすんなよ!あーやって他の女の子にもどうせ言ってんだから!揶揄われてるだけ」