第14章 木兎光太郎 エースの心得
難しい顔をして考え込む木兎さん
『冗談ですよっ!そんなわけないです!』
「ん〜!!俺の彼女やっぱりモテすぎて心配すぎる〜!!」
しょんぼりと眉毛を下げて泣きそうな顔をするから慌ててしまう
『えっ?!木兎さんっ‥大丈夫なのにっ‥』
木兎さんの腕の中で戸惑っていると背中に赤葦君の声が聞こえてくる
「木兎さん‥練習始めますよ」
「アカーシ!!絶対に花澄は渡さないからな!」
「いいですよ‥渡してもらうつもりはありませんから‥正々堂々勝負できるようになったら奪いにいきますんで」
『えっ?!』
「‥‥はっ?!」
呆気に取られる私たちをよそに赤葦君はスタスタと歩き出す
「先にアップしてますよ‥」
赤葦君の後ろ姿を眺めていると私を抱く腕にさらに力がこもる
「アカーシも言うようになったな〜!まぁ、エースから奪い取れるもんなら奪い取ってみろ!」
ふんっ!と胸を張って木兎さんが屈んでさっとキスをする
『っ?!木兎さんっ?!ここ‥っ‥みんないますっ‥!』
「花澄はちっちゃいから俺の影に隠れてみえねーの!まぁ見えても!問題なしっ!」
『ええっ?!ちょっと‥木兎さんっ‥!』
本当に問題なしと言うように自信満々にそう言うと赤葦君の後を追って走って行ってしまった
『もう‥木兎さんっ‥』
突然にキスをされて私の顔はポカポカと熱を持ったままだった
それでも
そんな木兎さんに振り回されるのも悪くないと思ってしまう
『とりあえず‥部活‥!』
くるりと踵を返してみんなのいるコートの方へ走っていく
コートの中でキラキラと輝く選手達
その中でも一際目を引く木兎さん
『モテすぎて心配なのは私の方ですよ‥』
きっと木兎さんはプロになってたくさんのファンが出来ると思う
ただでさえ敵も味方も観客でさえも魅了する木兎さんだから
「なーに考えてんのっ?!」
『わあっ?!木兎さんっ?!』
気付くと休憩の時間になっていたみたいで
目の前に好きな人の顔が迫っていてドキッとする
「もしかして俺の事考えてたっ?!」