第14章 木兎光太郎 エースの心得
赤葦君の眉が心配そうに下がるから慌ててぶんぶんと首を振る
『でもっ!もう全然痛くないの!!すぐに治るとおもうし!!ね!』
「‥」
『赤葦君‥?』
黙り込む赤葦君が心配になって顔を覗き込むとさらにキュッと手を握られる
「好きな人が‥怪我したら‥心配だから」
『っ!?』
木兎さんとはまた違う
赤葦君の少し線の細い指が私の掌をすっぽりと包み込む
赤葦君はいつも落ち着いていてあまり取り乱したところを見た事がないけど
珍しく顔が赤くなっていてつられて私も体温が上がってしまう
「木兎さんの彼女って事は分かってるけど‥やっぱり‥」
少し言葉を詰まらせた赤葦君の次の言葉を待っていると
後ろから肩をポンと叩かれる
「あの本‥どうだった?」
『わあっ?!木葉さんっ!』
あの本の事を思い出して顔が一気に熱を持つ
赤葦君の手がパッと離されて
木葉さんがニヤリと笑う
「木兎の事嫌になったらいつでも俺んとこきてね?」
「あの本って‥なんですか‥?」
今度は木葉さんに肩を抱かれていると赤葦君が少しムッとしたような声を出す
「聞きたい‥?」
「教えてください」
赤葦君と木葉さんに挟まれて身動きがとれずにいると突然木兎さんの叫び声にも似た大声が聞こえてくる
「アカーシとくっつくの禁止って昨日言ったのにー!!!それから!!木葉も追加っ!!」
バタバタとこちらへと来ると
またすっぽりと私を腕の中に収めてしまう
「みんなちゅうもーく!!これ!!俺の彼女なのっ!!手出し禁止っ!!」
大声を出す木兎さんをみてみんながいつものことかと笑い出す
「花澄ちゃんも大変ね‥よく木兎と付き合うわねー!私にしとけばいいのに」
『雪絵さんっ!』
もぐもぐと何かを頬張りながら三年生のマネージャーの雪絵さんが
ニヤリと笑う
「はっ!!敵は男子だけじゃないのか!!」
木兎さんがまた大きな声を出す
「あったりまえじゃん〜!周りの全員が敵だと思いなさいよ〜!」
そう言い残して倉庫の中に入って行ってしまう
「そうか‥確かに‥うちのクラスの女子も花澄の事よく話してるな‥」