第14章 木兎光太郎 エースの心得
目を覚ますと外はもう明るくなっていて
ふと横をみたら大きな口を開けながらすやすやと眠る木兎さんがいた
無邪気で
子供みたいなのに
バレーには真剣で辛い練習だって一切手を抜かない
むしろ元気すぎて中々木兎さんの練習にはついていけないと周りを困らせていることもあるくらい
そんな木兎さんの相手をしてくれるのはセッターの赤葦君くらいだった
「あかーし‥とす‥」
むにゃむにゃと寝言を言いながら木兎さんが手をあげる
木兎さんと赤葦君の二人だけの練習を思い出す
本当に2人はいいコンビだと思う
『私も‥赤葦君みたいに木兎さんの事を支えてあげられるといいな‥』
少し寝癖のついた髪を優しく撫でると
さっきまで寝ていた木兎さんがガバッと起き上がる
「今っ!!赤葦の話した?!」
『わあっ!び‥びっくりしたぁ‥』
私は朝が弱くて中々ベッドから抜け出せないけど
木兎さんは起きた途端から木兎モード全開なのがおかしくてくすくすと笑ってしまう
「なーに笑ってんの?!」
『いえっ‥木兎さんは起きた瞬間から木兎さんだなって思って‥ふふっ‥』
「このっ‥朝からそんな可愛い顔してっ‥!」
『きゃっ‥!木兎さんっ!ダメですよっ‥!』
胸の谷間にぐりぐりと顔を埋める木兎さんの頭をとんとんと叩く
2人で笑い合いながら
幸せな朝がゆっくりと過ぎていく
その後は午後練習の為に身支度を整える
手首を痛めてしまった私の代わりに服を着させてくれて
湿布と包帯を慣れた手付きで手当てしてくれる
『何から何まですみませんっ‥ありがとうございました!』
玄関で靴を履いてぺこりと頭を下げる
「いーって事よ!昨夜はあんなにかわいー花澄がみれたしなー!」
満開の笑顔でぽんぽんと私の頭を撫でると
2人分の荷物を持って立ち上がる
「さー!!今日も部活がんばんぞー!」
相変わらず元気いっぱいな木兎さんにつられて一緒に
おー!と片手をあげる
「それ‥手首‥怪我?大丈夫?」
体育館についてコートへと向かうとすでに準備を終えた赤葦君がいてそっと手首に手を添えられる
『そーなのっ‥マネージャーなのにごめんねっ‥!』