第14章 木兎光太郎 エースの心得
片手でとっても大きなポップコーンを抱えたまま
もう片方の手が私の手をギュッと握りしめる
いっつも私は木兎さんに助けてもらってばっかりだ
こんな私の事
嫌いにならないかな‥
不安になって横を歩く木兎さんを見つめると
ピタッと止まって私の方をじっと見て大声を出す
「俺もう決めた‥花澄といる時はずっと手ぇ繋いどく!」
『えっ?!』
そうやって宣言した木兎さんは
宣言通り
映画中も
映画が終わってからもずっと私の手を繋いだままだった
「俺トイレ行ってくるけど‥ここで待ってて?!絶対変な人についていったらダメだからっ!わかった?!」
『はいっ!分かりました!』
何度も念を押されてお手洗いの前で木兎さんが出て来るのを待っていると
コツコツと高いヒールを履きながら歩いていたお姉さんが私の目の前でつまづいて転けそうになるから気が付けば飛び出していた
『危ないっ‥!』
「キャッ!ごめんなさいっ‥大丈夫ですか?」
『っ‥!ぜ‥ぜんぜんっ!大丈夫ですっ!お姉さんこそ大丈夫ですか?!怪我してませんか?』
「私はあなたが支えてくれたからなんともないわ‥本当にありがとう!」
立ち上がってぺこりと頭を下げてくれるお姉さんに私も頭を下げる
『お怪我がなかったなら良かったです!』
「こんなに可愛いのにいい子なのね‥何かお礼を出来たらいいんだけど‥」
『そんなっ‥とんでもないですっ!』
カバンをゴソゴソと漁り出すお姉さんにぶんぶんと頭を振る
「何もないわ‥ごめんなさいね!本当にありがとう!」
綺麗なお姉さんはもう一度私に深くお礼をするとそのまま歩いて行った
お姉さんが見えなくなったくらいに右手首をそっと掴むと鋭い痛みが走る
『っ‥右手‥やっちゃった‥』
さっき咄嗟に抱きしめて支えた時に手首を痛めてしまったみたいだった
マネージャー業務もあるのにどうしよう‥と下を向いていると
後ろから突然ガバッと抱きしめられる
「今度はお姉さんにナンパされてんのっ?!」
『へっ?!ぼ‥木兎さんっ?!』
「つーか手首どーしたっ?!痛いのか?!」