第13章 バレンタイン番外編 稲荷崎 北信介
バレンタイン
今日は土曜日で部活だけだから
昨日の夜に手作りしたチョコをカバンにたくさん詰めていく
『おはようございます!』
「「おはよー!!!俺へのチョコは?!」」
「双子はほんまに懲りへんなぁ〜」
「そんなん言うてるアラン君やって花澄からのチョコ期待しとるんとちゃうん?!」
侑がアラン君に迫っていくから慌てて間に入る
『作ってきたからっ!練習終わったら渡すから待っててね!』
「っしゃー!!花澄の手作りチョコ!!」
「ほんと‥朝から騒がしいやつ‥花澄もめんどくさい奴に好かれて大変」
同じクラスの倫太郎がため息をつきながら私の横に並ぶ
『そんな事ないよ〜!侑はいつでも元気だから私も楽しいよ!』
「‥そんな可愛い顔するから‥」
『えっ‥?なんて‥』
聞き返そうとすると倫太郎の顔がグイッと近づいてくる
「あーーー!!!抜け駆けズルイやろっ!」
2人で話していた私たちを引き離すように侑が割り込んで
急に腕の中にすっぽり収められる
「‥何騒いでんのや?‥侑は何でマネージャー抱きしめてんねん?」
北さんがガラガラと体育館の扉を開けて歩いてくる
「北さん!!聞いてくださいよ!!」
「話は後で聞いたるから‥先にマネージャー離したれ」
北さんにそう言われると
侑がしぶしぶと私を抱きしめていた腕を緩める
こうしていつものように騒がしく始まった練習も
始まった途端に真剣な表情に変わって
あっという間に午前練習が終わった
解散する前に部員達1人ずつにチョコを渡していく
みんなとっても喜んでくれて
侑と治はよっぽどチョコが好きなのか
ギュッと胸に大事そうに抱き締めたまま
帰っていった
「お待たせ‥寒かったやろ?」
校門の外で待っていると
ふわりと後ろからマフラーを巻かれて振り返る
『北さん!!マフラーいいんですか?』
「ええよ。いつもマフラー忘れてくる花澄の為にカバンに2つ忍ばせてるねん」
優しく笑う北さんの姿に胸がキュンとして顔が熱くなる