第12章 黒尾✖️研磨 おさななじみ
研磨side
何度目かのレースをしていると
花澄のキャラクターが明後日の方向に走り出す
「花澄‥?逆走してるけど‥」
ふと隣をみるとハンドルを握ったまま
こくこくと頭を揺らしながら眠っているみたいだった
「ね‥起きて‥?そろそろ帰らないでいいの?」
窓の外の景色もすっかり暗くなっていて花澄の身体を優しくゆすってみるとそのままこてんとベッドに倒れ込んでしまった
『‥』
こうなってしまった花澄が起きないのは幼馴染である俺とクロはよく知っている
「困ったな‥」
ゲームの電源を落として優しく頭を撫でていると
花澄の携帯の着信音が鳴り響く
「電話‥兄ちゃんから‥か」
ディスプレイには花澄の兄ちゃんの名前
家が近所だから当然俺も何回も遊んだ事がある
「もしもし‥」
「もしもし?研磨?もしかして花澄寝ちゃった?」
電話にでると会社から電話しているのかざわざわと騒がしい音が聞こえてくる
「うん‥ゲームしてたら寝ちゃった‥無理矢理起こす?」
「そうか〜いっつもごめんなぁ?それが俺今日は仕事長引きそうでさ‥研磨が良かったら泊めてやってくんないかな?研磨のお母さんには俺から連絡しとくからさ」
「俺は全然いいけど‥」
「助かる‥ごめんな‥例の事もあって夜1人にすんの怖くってさ‥研磨頼むな?」
実はつい先日
花澄のストーカーみたいなやつが家まで付けてきてて
怖い思いをしたらしい
「そーいうわけで、俺そろそろ仕事戻るわ!迷惑かけてごめんな!じゃあ宜しく!」
電話口で少し困ったように笑うと
そのまま電話が切れてしまった
「俺は‥むしろ嬉しいけどさ‥」
隣をみると可愛い寝顔
俺の気持ちなんか知らないでベッドですやすやと寝転ぶ花澄の上に覆い被さるように跨ると
ベッドがぎしっと軋む
「研磨〜?花澄ちゃんのお兄さんから電話あったわよー!夜ご飯出来たら呼ぶからその時には起こしてあげなさいよー!」
階下から母親の大声が聞こえて身体がぴくりと反応する
「分かったよ‥」