第11章 菅原孝支 抗えない熱
呑気に鼻歌なんか歌いながら
自分たちの個室へと向かうとそこには目を疑う光景があった
「白鷺先生っ?!」
脱ぎ捨てられたカーディガン
胸元が乱れたブラウス
透き通るような真っ白な肌は熱でもあるんじゃないかと心配になるほど赤くなっていて
どこか虚なとろんとした大きな目で今にもキスしそうな程俺の同期の先生に迫っていた
「ちょっ‥待った待った‥俺が席を立った数分に一体何があった?!」
周りで事の成り行きを見守っていた男の先生が顔を真っ赤にして教えてくれる
「その‥間違えて菅原先生のお酒飲んじゃって‥じゃあ突然あんなふうに‥」
咄嗟に白鷺先生を同期から引き剥がす
相手が女の人だったとしても‥なんか嫌だ
「あー‥ドキドキした‥つい固まっちゃったよ‥と言うわけで、菅原先生のお酒飲んじゃったんだから責任持って家まで送ってあげなさい」
ん、と差し出される白鷺先生の大きな瞳に見つめられてドキっとする
「えー!!菅原先生だけずるいっス!つーか白鷺先生もう帰っちゃうんスかー!」
「ずるくないの!今から私達で二軒目いくよー!」
ブーブーと言う男性陣を取りまとめながら俺にウインクする
我ながらいい同期を持ったな‥
「と言うわけで‥帰ろっか?」
乱れたブラウスを隠すように俺の上着を羽織らせて
脱ぎ捨てたカーディガンを持って立ち上がる
ふらふらと立ち上がって危なっかしい足取りで歩き出す白鷺先生の肩を持ってタクシーを拾うために外に出る
たまたま目の前を通ったタクシーを捕まえて白鷺先生と共に乗り込む
「家の住所言える?」
『仙台‥』
「そこからっ?!」
『んぅ‥』
「んぅ?‥ってもう寝てる?!困ったな‥」
華奢な身体をゆさゆさと揺らして呼びかけてみても一向に起きる気配がない
「仕方ない‥これは不可抗力だよな‥」
タクシーの運転手に俺のアパートの住所を告げて車が走り出す
『すがわらせんせ‥』
眠ったまま猫みたいに擦り寄ってくる白鷺先生
「可愛い彼女さんですね〜」
タクシーの運転手さんがにこやかに話しかける