第10章 天童覚 手に入れたくて
天童side
「花澄ちゃん中々でてこないね〜」
手首を掴まれたままどこかに連れて行かれた花澄ちゃんの事が気になって若利君と校門の前で待ち伏せる
時間が過ぎる度になぜか嫌な予感がして冷や汗がでる
暫くすると乱れた制服のままこちらへ走ってくる花澄ちゃんの姿が見えて
心臓がギュッと締め付けられる
いつも胸元にきちんと結ばれた
大きな紫のリボンは見当たらず
ブラウスのボタンは乱雑にちぐはぐに止められていて
柔らかい髪は乱れている
何があったか一瞬で理解して拳を握りしめる
今すぐにでも
あいつをぶん殴ってやりたいけど
仮にもあいつは花澄ちゃんの彼氏だし
本当のことはまだ分からない
グッと堪えて華奢な身体をおんぶしてやると小刻みにその身体は震えていた
心配な気持ちの方が強いのに
背中に触れる柔らかい熱に俺の心臓はドキドキと音を立てる
こんな時なのに俺って‥
都合いいやつ
花澄ちゃんは俺の事なんて何とも思ってないはずなのに
出来るだけ揺らさないように優しく歩き出すと突然ギュッと強く抱きついてきて
俺の背中に花澄ちゃんの顔が密着する
こんだけ近いとドキドキしてんのバレちゃいそうっ‥
その後は出来るだけ楽しい気持ちになってもらえるように
なんでもないバカみたいな話をしながら帰った
翌日
教室に入ると何事もなかったかのように明るく振る舞う花澄ちゃん
「おーはよ」
人差し指を突き出しながら
トントンと肩を叩く
『おはよう天童くんっ?!』
ふにゅっと柔らかいほっぺたに俺の人差し指が触れると
可愛い顔がまた赤くなっていく
触れる度にそんなに顔赤くされると
勘違いしちゃいそうになるな〜
「今日の放課後部活ないしさ〜前言ってたとこ教えてくんない?」
グッと顔を近付けると赤い顔がさらに赤くなる
『う‥うんっ!いいよっ!』
「わーい約束ね〜?」
ひらひらと手を振って自分の席に腰掛ける
前の席に座った花澄ちゃんをちらりとみると
耳まで赤くてドキンとする
これ‥もしかして少しでも俺の事意識してくれてる?